筆

売文の 筆買ひに行く 師走かな
【作者】永井荷風


先日のお休みに、久々に書道具屋さんに行きました。
売文(小説家)ではありませんが、一応はんこ職人です。
この頃の売文も、パソコンで仕事をされますが、はんこ職人も同様らしい・・・。
嘗て、お得意先のご好意で、今は有名になりましたコミケに落款印の実演販売に出かけていた時がありました。
お得意先は、画材関連のお仕事で、最初の頃は、コミックを手で書く道具がやたらと売れていました。
ペン先、ロットリングペン、彩色用のマジック、インク・・・
それらが、段々と売れなくなる代わりに、パソコンでコミックが描けるソフトが飛ぶように売れていくようになりました。
手ではないですが、スクリーントーンなどもパソコンでできるようになると、全く売れなくなったようです。
はんこ職人も作品作りは別として、お店ではパソコンフォントを使い、仕事をされている方が多くなっています。
筆がいらなくなってきているようです。
パソコンはキーボードを打つために、指先は使うかもしれませんが、形を司る感覚とは違う頭と連動しています。
筆は、その特質から書体を表現するのに利用する頭脳と手が繋がる感覚を身に着けさせてくれます。
それを忘れると、きっと大変なことになるだろうなぁ~。
自分は、そうはなりたくないし、手と連動できる筆を大切にしていこうと思います。
パソコンは便利なようですが、感覚や感性という世界から、人の表現を切り裂いていく道具でもあるような気がします。
昨日、『楽篆』という篆刻の専門誌が届きました。
その中で、故河野隆先生の初世中村蘭台の印を解説する文章がありました。
掲載すると、著作権上問題がありますので、ここでは控えますが、篆書の特質を知るためには、筆で書く力が第一に求められるとしておられます。
勉強になりました。
有難うございます。
パソコンは、手を抜くことができます。
それは、手の退化を意味しています。
手抜きで良いモノが継承されることは、ありません。
身に染みて思います。
故河野先生に合掌。

posted: 2019年 12月 25日