「菓子木型職人」市原吉博さんの哲学と発信方法

業界の技術の捉え方や技能検定に対する姿勢に触れると、時々嫌になる事が多いご時世になってきています。
印章という商品の土台は技術であります。
揺るがない事実であります。

そんなこんなを考えていると、昨日のNHKの朝のニュースで高松の菓子木型の職人である市原吉博さんの仕事を紹介されていました。
私の理想形の職人の在り方だと思い、ご紹介させて頂きます。
木型の職人さんは、3Dの彫刻機が出現してからの減少数は著しいものです。
各地の技能士会からドンドンと姿を消していかれています。
菓子木型となると、市原さん自身のホームページでも述べられているように「絶滅危機にある菓子木型」とあり、職人は全国で6~7人のみとのことです。

大印技術講習会の恩師である故二葉先生が、「手彫りをしていたら、技術を勉強していたら、間もなくそういう本物を作製できる人は、極度に減る時期がくる。そうなったら技術を勉強してきた者の天下になるで。」とよく冗談半分に言われていたことがありました。
それが、最近では劣悪な業界環境下で現実味を帯びてきています。
全体的に下がると、もはや天下どころの騒ぎではなく、市原さんのように本物の情報発信環境を工夫し整えたものが天下なのかもしれないなぁ~と考えます。

みなさんは、どう考えますか?

https://www.kashikigata.com/

posted: 2019年 6月 13日

技術で生きるとは

今朝のニュースで、東大阪のメガネ屋さんを紹介していました。
そこは、今流行りのフランチャイズ型、多店舗型展開のお店と真逆のことをされて、遠方からのお客様を多く獲得されているとのお話でした。
通常?のメガネ屋さんは、早いところで30分仕上げのお店が主流ななか、そこは最低3万円のオーダー品を主力に3か月のお客様待ちとなっています。
新商品を探し、店舗に並べるのでなく、一点一点がその人にあった眼鏡という、お客様からすると新商品です。
印章はなおさらそうで、一点一点違わなければ、印章の意味を成しません。
しかし、現在のはんこ屋さんは新商品を捜しまわり、商品のクオリティーを向上させることを怠り、技術を軽視し、職人を軽視し、その技術を覆い隠し、パソコンでできることをオリジナルと称し、何ら努力されていない通常?のメガネ屋さんと同じだと思います。
しかし、そういうところも、いろいろと工夫(誤魔化し)しないと価格競争に負けてしまいます。
ニュースで紹介されたメガネ屋さんは、お客様との接客に時間をかけられ、ミリ単位でお客さにあった商品を探求されています。
技術で生きるとは・・・そういうことだと思います。
印章は、技術が土台の商品です。

posted: 2019年 6月 7日

実印をきちんと作製し販売できるのがプロフェッショナル

紫陽花や きのふの誠 けふの嘘
【作者】正岡子規


6月になりましたので、気になることもあり気分転換を兼ねてお墓参りに行くと、紫陽花が綺麗に咲いていました。
おかしげな天気ですが、梅雨を迎えると紫陽花に目が行きますね。

職人気質に誠や嘘は、おそらくないのだろうと思います。
嘗ての私も今の私も、仕事の手を抜く事を嫌います。
柘の仕事も高級象牙の仕事も同じく精魂を傾ける。
これは職人気質ということでは、正論であります。
どんな仕事も手を抜かない。

しかしながら、お客様目線ではどうでしょうか?
より多くの対価を支払っているのに、安価な商品と同じ仕事をされたのでは、たまったものではありません。
何のために高度な技術に対して価値を見出し、より高額な対価をお支払い頂くのか意味をなさなくなります。

だからと言って、価格の低い方の仕事の手を抜く事ができないのが、職人気質だと思います。
上手に職人気質とお付き合いしていかないと、職人としての仕事に厭きがきて、日常の仕事に面白味を感じなくなり、どうして手を抜こうかという事ばかり考え始めてしまいます。
それではもう職人ではなく、職人気質を人に見せるという別の仕事となり、手元の仕事がおろそかになり、仲間内が見ても「なんじゃこれ?」という仕事をして平気で消費者にお渡ししてしまいます。
そして、印章の価値が益々低下していくのです。
「こんなものか!」と思われたら、観光商材と違いますので、いつかは人から指摘されたり、使用しているうちに疑問を持ってしまいます。
本物は、見ていて飽きがなく使えばより真価が発揮されるものです。

上記のことに、なかなか答えを見出せない私ですが、嘘ある商品はお渡ししたくない、自分よがりの商品もお渡ししたくない、精魂込めた本物をお届けしたい。
その為には、やはり職人は死ぬまで勉強ですね。
後、どのくらい紫陽花の変化を見ながら考えるのでしょうか。
「けふの嘘」にならないように、自らのお客様を大切にしていきたいと強く思います。

posted: 2019年 6月 3日

中身を充実させる意識と努力と継続と

青蛙 おのれもペンキ ぬりたてか
【作者】芥川龍之介

昔は、「ペンキぬりたて」の張り紙をよく見たものですが、最近は見なくなりましたね。
「ペンキぬりたて」は初心者マークのように、表面上は綺麗な色でテカテカに光っていても、まだ中身のない状態を表しているのかなと推察できます。
芥川もそれになぞらえて、中身のない自分を内観しているのだと思います。

見栄えをよくすることは大切な事だと思いますが、中身があっての見栄えです。
中身もないのに、全体の機運に乗せられて色を塗り過ぎると、異様な感じを与え、気が付くと消滅しています。
中身があってこその装飾です。
装飾を考えることは楽しいかも知れません。
しかし中身を充実させることには、意識と努力、そして継続が求められます。
そしてそれは、目に見えない地道な世界観や思想が必要です。

世の中に、青蛙を見ておのれの不甲斐なさを感じた芥川のような人が少なくなってきているのは事実だと思います。
そういう人が増えないと、日本文化の継承はあり得ないと感じています。
確かに人は、百人十色ですが、一人ひとりが好き勝手なことをしていたら、その業や文化は一人ひとりの個人の楽しみでおわり、次世代に繋がることはあり得ないのです。
個人の表現の仕方、或いは生き方の違いなのでしょうが、私はそういう風に感じます。

posted: 2019年 5月 24日

春に気づいた小さな闘志

菫ほどな 小さき人に 生まれたし
【作者】 夏目漱石

春風や 闘志いだきて 丘に立つ
【作者】 高浜虚子

春の俳句
少し逆さまのように感じる二句です。
「令和」の新元号に商魂たくましく頑張っているハンコ屋さんを揶揄したようなお話をして、申し訳ないという反省がありつつ、反面やはり自分は少し違うなと気づき始めたのかもしれない何か・・・それを構築していこうという闘志も感じています。

揶揄や批判は簡単ですが、何かを示していくことは、またそれを自分の中に留めずに、広く啓発し共に歩んでいくことはとても難しい事だと思います。
まずは、素直にお客様に向かうこと
自分を研ぎ澄ませて、印面に向かうこと
納得がいく仕事を常に目指すこと
納得したものをお客様にお渡しすること
そうすれば、自ずと道は切り開けるかな・・・。

調べてみると、「令」の字は神のお告げを受け、神意に従うこととありました。
今日も頑張ります。

posted: 2019年 4月 3日

手間暇かけた仕事

実店舗のはんこ屋さんが減ってきています。
今年に入り、当店の近所のはんこ屋さんが閉店されてから、この春すぐに必要な人の来店が多くなりました。
以前は、そういう人は、閉店された近所のはんこ屋さんにご案内させて頂いていたのですが、
閉店以降困っています。
早くに合わせると、安いに合わせると、負の連鎖に陥ります。
手間暇かけた仕事には、日にちが必要です。
「何分でできますか?」には、お応えすることが出来ません。
何故なら、手間暇かけた仕事や「おもてなし」が出来ずに、手間暇と「姿のうつくしい印章」を
求めている自らのお客様を裏切ることとなるからです。
その両方をすべきだという考え方の人もおられるでしょう。
少し前によく聞いた言葉・・・
・・・「お客さんを逃がさない」・・・
少し違うと思うと同時に、そんな器用なことをするなら、そのエネルギーを
表面化していない、潜在的な自らのお客様のために使いたいと思います。
また、そのように二足の草鞋をはくと、本来のお客様を逃すこととなります。
大臣が言われていたような三文判に近いものを販売する度に
印章の価値を貶める結果を生み出すこととなります。

posted: 2019年 3月 27日

良い判とバッタもん

毎朝、はんこの神様と言われた関野香雲先生のお軸に向かい
「判が上手く彫れますように。」と朝のご挨拶を日課としています。
最近の気づきなのですが、少し違うなと感じて改めております。
「判が上手く彫れますように。」
ではなく・・・
「良い判が彫れますように。」に変えました。
何が違うのでしょうか?
そう
視点が違うのです。
「判が上手く彫れますように。」というのは、自分視点です。
自分の観点で、自分の技に対する自己満足です。
それに対して、
「良い判が彫れますように。」というのは、
使用者視点です。
使用者にとって良い判、良い印章
それを目指さなければなりません。

国会でデジタルファースト法案(今後、デジタル手続き法案となるらしい)の中で、印章に関する記述が取り除かれることとなったと業界政治連盟より報告がありました。
ほっと一安心ではなく、これを機に良い判とは何かの規範作りと発信を業界を挙げてして頂きたいと強く思います。

朝ドラ『まんぷく』では、萬平さんのつくった「まんぷくラーメン」のバッタもん(偽物の商品)が出回り、悪質業者をみんなの力で駆逐しました。
印章業界もバッタもんで溢れています。
それがバッタもんであるという認識すらなく、開き直っていると、デジタルファースト法案の次の大きな問題に対峙することとなると思います。

明日から、良い仕事(印章においては、良い判)を目指す全国の職人の技の競技会である
第30回技能グランプリが神戸にて開催されます。
印章木口彫刻作業において、お手伝いに2泊3日で行ってきます。
嘗て選手として6回も参加させて頂けた恩返しができることをとても嬉しく、全国の良い判を目指す職人達の熱気に触れられることをとても楽しみにしています。
その間、文章を書けないと思います。
それでは、また来週・・・。

posted: 2019年 2月 28日

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