未来は常に過去の中にある!

枯るるとは縮むこと音たつること
【作者】大木あまり

昨日、仕事終わりにネットサーフィンを「民藝」という言葉で検索していると、次のような言葉に出会いました。
サーフィンなので、字ズラだけで、潜ってはいません。(笑)

「未来は常に過去の中にある!」という言葉です。
過去に学ばないで、新しいことは出来ないと思います。
新しモノ好きな人が、今!自分がしている事が新しいと思っていても、過去にもうすでに先人がトライしているということは、間々あります。
また、過去に学ばないものが、新しいことなどできようもないのです。
過去に学ぶということは、受け継がれてきたモノに対して、頭を下げることです。
頭を下げる事のみにあらず、それを習得するための努力をせねばなりません。
そうして、重厚になった自らが薄着になるために、後進に道を譲っていく過程が継承であります。
継承を重視する者にとって、障害となるのは、それをしないモノであります。
継承は、過去を伝えるという作業ですが、道は未来に向いています。
ツタのように絡まって来る邪悪なモノや重厚に着ぶくれした熟練との闘いです。
事実を認識する力も求められます。
その事実は、プラスのことばかりではなく、どちらかというとマイナスなことが多くあります。
それに目を背けていたのでは、継承は出来ません。
継承ができないということは、未来に繋がらないということです。
それは、枯るることであり、縮むことです。
そして、いつかパキッと音を立てて、折れてしまうことでしょう。
それも事実です。
前を向いて、受け入れながら解釈していくことがプラスへと変化していくことだと思います。

posted: 2019年 12月 6日

凍蝶

凍蝶に待ち針ほどの顔ありき
【作者】みつはしちかこ

私の年代の方なら男女問わずに、みつはしちかこさんを知っていると思います。
チッチとサリーの『小さな恋のものがたり』という4コマ漫画の作者です。
みつはしちかこさんは、『野の花あかり』という句集も出されております。

この句の解釈はいろいろとあると思いますが、凍蝶(いてちょう)・・・凍ったように動かない蝶は、その羽の色鮮やかさや大きさが印象付けられます。
それと対比して、まあ!小さい事でしょうか、その顔は待ち針の頭ほどの大きさです。
顔とありますが、私には頭、頭脳、考え方、思考、思想と思われます。
その頭があるから、あの大きな色鮮やかで文様の美しい羽を動かすことが出来るのです。
その顔(頭)がとまれば、本当の凍蝶、動かぬ蝶、死んだ蝶になります。
何でも、根本が大切です。
根本失くして、美や文化も実用も制度もあったもんではありません。
当面、羽をバタバタさせる必要は大いにあると思いますが、顔(頭)をもぎ取られた蝶は、その羽を使って二度と飛び立つことは出来ません。
文化もそれを担う職人がいて、それを使用する人が大切にして、初めて成立するものです。
根本を・・・待ち針ほどの顔を見なおして頂きたいと、あらゆる方面にお願いしたいものです。

posted: 2019年 12月 4日

「関連」という想像力を働かせよう

土は土に隠れて深し冬日向
【作者】三橋敏雄

先月に一度させて頂いたお話です。
お店の水道メーターの交換に若い作業員の方が気を利かして、水道メーターに付着していた錆びを落としてくれました。
そうすると、チョロチョロとしか流れなかったトイレの水が勢いよくながれたのです。
何度も流さないと流れない・・・。
あちらこちらに文句を言いました。
最初は配水の清掃業者が入ってから流れが悪くなったので、文句を言うと、配水は出来ているので、便器が悪いと確認の写真を撮って、それでお終い・・・
便器までの接続の配管が古くなっていると大家さんが水道屋さんに言って取り替えて頂いたのですが、それでも流れる状態は変わらず・・・
何が悪いのか訳が分からず、1年以上諦めていました。
それが、たまたま水道メーターの若い交換作業員の機転で、よく流れる便所にもどったのです。

それぞれの部門の方は、それぞれの仕事をしておられたと思います。
配水清掃、排水の清掃、水道工事屋さん・・・
しかし、何故水が流れないのかという根本問題に目を向けて頂けた人はいなかったということです。
部門、部門は完璧だけれど、その関連に目が行っていない。

印章も、印章が出来上がるまでには、文字の選択、文字のレイアウト、彫刻とそれぞれの部門があります。
いくら文字が書家の大先生が書かれた良き書を持ってきても、丸や四角にそれが上手くレイアウトできなければ、その書の文字は何の意味も持ちません。
また、いくら良きレイアウトを得ても、酷い彫刻や機械での彫りっぱなしや、手仕上げとは名ばかりの文字を殺すような仕上げでは、それも意味がありません。
全てが関連してこそ、初めてきちんとした印章が出来上がるのです。

冬日向の縁側から、庭の土を見ると、その下にはまだ土が隠れているから、上部の土が冬の光に照らされるのです。
土の下に関連する土の存在を想像する人は、あまりいません。
物を使用する人でも、それを作った名も無き職人に想いを馳せる人も、やはり少ないと思います。
しかし、それが大事だとするところに日本的霊性は存在して、我々に良き暮らしを啓示してくれていることは、忘れてはいけないと思います。

posted: 2019年 12月 3日

字彫り虫になるな!

萩刈りて風の行方の定まらず
【作者】柚口 満

雨が降るという予報ではないのですが、曇天の空気が傘を持たずに家を出ることを警告しているようでした。

「字彫り虫になるな!」とは、先生、先輩によく言われたことです。
文字を一生懸命彫るのが、はんこ屋職人なので、どこが悪いんや!と、ず~っと思っていました。
最近、その警告が漸く理解できるようになりました。
はんこ屋さんの数が少なくなり、風通しが良くなるのかなという意見もありましたが、職人対商人のような構図が完成してしまい、何やらどこに向いて風が吹いてよいのかという迷いが、それぞれにあるようです。

しかし、印章の土台が技術であり、それが崩壊しかかっていることは確かな事実であります。
技術がないといことは、職人がいないということです。
職人がいない業には、規範はなくなり、制度を維持したくとも、その論拠がなくなり、飾りだけのAI搭載彫刻機(熟練の印章彫刻職人)が、途方もなくこちらを見つめているだけの業?となり果てます。
彫刻機に向かい「字彫り虫になるな!」と老齢の職人が唾をとばして吠えています。
悲しきかな、これが現実ではないかなと思います。
悔い改めよ!と、今更誰が誰に物申すのでしょうか?
今は、自らが悔いなきように、風の行方の定まらない荒野で、全力を出し切るのみなのかも知れません。

間もなく、令和元年度後期技能検定の試験運営担当者会議があります。
これを受けて、試験の段取り、各受験生への案内、12月に入ると講習会への案内運営が待ち構えています。
ゴム印彫刻作業の技能検定が来年初頭に実施され、これにてこの作業の技能検定は終焉を迎えます。
お役目、ご苦労様でした。

posted: 2019年 11月 27日

先生ありがとうございました

先生ありがとうございました冬日ひとつ
【作者】池田澄子

連続テレビ小説『スカーレット』のフカ先生が信楽を去ります。
時代と共に絵付け火鉢どころか火鉢そのものが、電気やガスに追いやられて無くなっていきます。
フカ先生は、喜美子や弟子たちに何を残して去るのでしょうか?
絵付けの技術でしょうか?
絵でしょうか?
技術の在り方でしょうか?

私も先輩先生方から多くの事を学びました。
印章の彫り方でしょうか?
印章の文字についてでしょうか?
職人としての考え方でしょうか?

これと言ってしまえないほどの多くの事ですが、これと言えないところに感謝の念が湧いて来ます。
印章の文字(篆書)は、一つの形のみではありません。
いろんな状態に対応できる要素をもっています。
画数を増やしたり、減らしたり・・・
横長な文字として対応する能力
縦長な形状に対応する能力・・・
全体として纏まりを持つことのできるのは、印章として活躍するためにそなわった篆書の大きな力です。
それらがある事を教えて頂いたのが、先生です。
だから、私はフォントは使用しません。
フォントを使用して、いくらそれを修正しても同じ骨組みだからです。
フォントを使用して、いくら上手?に手で彫刻しても、それは偽物であり、先生を裏切ることとなります。

何のために自分は先生から印章彫刻を教わり、はんこ屋として自らのお客様のために懸命に仕事をしているのかを自問自答することが最近いろいろな場面で感じることです。
先生ありがとうございましたと素直に言える心を持ちたいものですね。

posted: 2019年 11月 26日

左利き

木の実独楽ひとつおろかに背が高き
【作者】橋本多佳子

私は、左利きです。
先日、奥様が左利きの方が、「左利きの人は、どうも脳の違うところで考えているらしい。私の奥さんもそうですが、三田村さんを見ていると、そういうところがあるように見えます。」と話されました。
一人、ひとり個性があるように、そうなのかな、面白いなと思いました。
文字もそうです。
フォントであれば、全て同じです。
印刷すれば、同じ名刺や印刷物が出来上がります。
印章は、それでは困ります。
フォントでパソコン画面上に出来上がった印面は、同型印の作製に繋がる危険性があります。
文字が全て同じ顔をしています。
いくら手で上手に彫刻されても、「元」の字が全て同じとか・・・あり得ないことです。
印章の価値を下げる行為に称讃は致しません。
字入れ→荒彫り→仕上げは、一貫した関連作業です。
最初の字入れで、訳の分からない不十分さは、仕上で良くなるはずがないのです。
印章を彫刻する職人にとって、大切な事は「何を彫るか」です。
また、そんなことを言っていると、「三田村は、左利きだからなぁ~」と言われそうです。

おろかに背の高き自分であることを誇りに思います。
それが、個性でオリジナルです。

posted: 2019年 11月 21日

偽りの世に養うべきもの

偽りの世に気をとり直し日記買ふ
【作者】今泉貞鳳

小学校や中学校の時、今はあるのかどうか知りませんが、「日記」を配布され、書いて提出するように言われました。
今は、このようにして拙い文章を日々お見せしていますが、その時は、嫌でいやで仕方がありませんでした。
フェイスブックやブログに、このように書くことは、日記なのでしょうか?
パソコンやスマホは、過去のいろんな慣習や文化を吸収して、一つの箱に入れて便利になったように感じますが、嘗てのそれぞれの慣習や文化というのは、少しずつ中身や本来の目的を変えてしまっていることに、気づかなくされているようにも感じます。
逆に、伝統文化や伝統技術というのは、細分化されて露呈されるようになりました。
また、その作業工程を細分化して、生き残る道(作業・分野)を模索せねば消滅してしまう運命にあるのかなとも思います。
ただ不思議に思うのですが、それぞれ元々あった本質や目的は、どこへ消えていったのでしょうか?
物や思考が集まったり、離反して分散したりと、忙しいのが常のように思わされていますが、それも偽りの世かも知れませんね。
大切なことは、本質を見る思考力を養うことだと、最近つくづく自らの印章業界を見ていても思い知らされます。

posted: 2019年 11月 19日

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