立春にて

ご破算で願ひましては春立てり
【作者】森ゆみ子

暦では、立春です。
節分が過ぎ、暦を分けて春を呼ぶ
易では、この日を境に運命が変わるらしいとのこと・・・
いろいろと、ご破算にしてほしいことが多い年でした。

夫婦で連続テレビ小説『スカーレット』を見ています。
八郎と距離を取ってまでも穴窯に執着し、自分の道を貫く喜美子に共鳴していると、家内が「あんたは、やはり芸術家肌や。でも、そういう人が家に二人おったら対立するのはあたりまえや。」と言います。
私は芸術家ではなく、職人肌で一つの事を追求しだすと夜昼関係なく、寝食をとらずにでも突き通す性格(たち)です。
もう一人、自分と同じたちの人間がいたら、喧嘩が絶えず、上手く付き合うことは難しいと思います。
黄綬褒章の受章の折に、受章会場で出会った職人さんや芸術家の人達は、やはりどこか変わっていました。
向こうも私を見てそう思っているかもしれませんが、一つの道を貫いて何かを作り上げ後世に伝える努力をしている人には共通点があるのかもしれません。

写真は、お客様にお渡しする時の印面を捉えた写真です。
黒水牛です。
作業時には、文字が見えやすいように印面に朱墨を添付して作業します。
それは、職人の都合です。
上手な職人は、朱墨の粒子を細かくして、ささっと添付するので、仕上をかけた後は、刀の切れがくっきりと出て、とても綺麗な線が表現されます。
しかし、それも職人の自己満足です。
この自己満足から下請け仕事が多かった私は、なかなか抜け出す事が出来ませんでした。
しかし、使用するのはお客様です。
印面にはどんなに上手な職人さんにより粒子が細かい朱墨が添付されても、それを洗い流している化粧無しの印面の方が、はるかに綺麗に捺印できます。
最近では、これを添付する機械も出現、呆れることに金箔を添付して喜んでいる商売人もいるとか・・・本末転倒とは、こういうことです。
化粧もし過ぎるとお化けになります。
節分が過ぎ、本日の立春ですので、「お化け」は終わりにしたいものですね。
化粧で膨れ上がった醜い、お客様不在の印章をお渡しすることは、そろそろやめませんか。

posted: 2020年 2月 4日