職人型の仕事

朝からテレビを見ていると、コロナウイルスの感染について、専門家の意見も少しずつ違うし、そこに経済的な見方が入れば、尚更違ってきます。

どれが正しいのか、分別が付きにくい現状ですが、このようにwithコロナ社会がまだまだ続くとすると、やはり今までのやり方というのは通用しなくなることだろうと思います。

印章業においては、今までの大量生産、大量消費社会に適応してきたやり方では、ダメというより、社会から完全に見切られていると思います。

以前、職人型の印章彫刻姿勢にたいして、いくら速い職人でも、大量の仕事が来たらその納期に対応出来ないから、ドンドン機械やコンピューター彫刻機を使い作成することは、社会からの要請で、職人型の方法論では対応できないのに責任を取れるかと問われたことがあります。

私は全国の印章需要に責任を負っているわけでもなく、職人型の仕事の在り方に対する攻撃の詭弁であることは明白でありました。

しかしながら、そういう時代は終焉を迎えています。

職人型の仕事に対して、儲からないと考えるなら、業界から撤退すべき時期であると、反対に職人的詭弁を弄したいと思います。

職人型の仕事への攻撃を内部からして、ドンドンと職人を減らし、技術を質的にも低下させてきた業界の在り方が、逆に問われてきています。

今までのやり方が通じなくなったのは、新しいやり方や思想がないという事ではなく、本来の印章の在り方に戻り、技術の信頼を取り戻すことが、今求められていると思います。

象牙がいくら良い素材で、現在国内在庫のみを使用しているといくら叫んでも、「象をはんこ屋が殺している」というイメージが先行して、社会的にマイナスイメージが立ち込めたのと同様に、リモートワークの障壁としての印章イメージに、いくら印章の法的な正当性を述べても、コンピューター式彫刻機で量産されているパソコン印章やフォント印章、同型印の危険性を大いにはらみ、その規範無き業界を誰が信用してくれるでしょうか。

しかも、ドンドンと質量共に低下していく技術。

具体的には、令和3年度後期技能検定で100名の受検者を集めないと、技能検定を廃止しますよと言われている印章業界、それへの対策がコロナにより全国的には上手く進まない・・・2級対策だけでなく、1級の受検者も換算されての100名に対して、1級は講習会や研究会も休講が多く対策が皆無といっても過言ではない・・・来年の10月初旬には受検受付が開始されます。

マイナスな事ばかり言うようですが、プラスへの転換点を全て失笑しながら見送ってきたのは誰でしょうか。

社会のイメージを転換するのは、もう一業界で可能な事ではありません。

これは、社会問題として対応していかないといけない状態になり果てています。

伝統文化や工藝の担い手不足とは、少し違った経路をたどっていますが、国や自治体レベルでの議論に高めていかないといけません。

withコロナ社会における印章の在り方を模索して、リモートワーク中でも捺印のために出社して、自分の意志を確認したい印章を作製できるのは、職人型仕事しかないと思います。

自らの仕事に責任を持ち、またプライドと想いをかけた仕事なら、職人の物づくりへの姿勢と想いの融合を果たせると私は信じてやみません。

きっと、withコロナ社会は印章冬の時代からの目覚めをくれると考えています。

posted: 2020年 8月 2日