業界全体として技能検定の必要性が理解されていない

林檎投ぐ男の中の少年へ

【作者】正木ゆう子

 

長文お許しください。

 

「○黒澤座長 印章彫刻は、昭和45年に申請されたのですが、累計受検者数が段々と減っていて、技能検定の受検は非常に低調であることと、過去にもこういった統廃合の検討会の対象に挙げられているよということ。また、ヒアリングによると潜在的な受検者候補者数はあるけれども、受検ニーズに繋がっていないということ、技能検定を長く実施しているにもかかわらず、業界全体として技能検定の必要性が理解されていないことが考えられます。このため廃止することが適当ではないが、しかしながら一方で、関係業界の団体は会員以外を含めて、潜在的な受検候補者への働き掛けに取り組む姿勢を見せていること、現行の3年ごとの実施に当たる令和3年度の技能検定試験では、先ほど令和3年度は120名以上あるのだとおっしゃってましたので、そういったことを踏まえて、直ちに廃止とはせず、令和3年度の受検者数をきちんと見極めた上で、当該団体としての受検者拡大に向けた、具体的な取組結果を踏まえて、改めて本検討会にて諮ろうということでございますね。」

 

以上は、令和2年2月に行われた厚生労働省の第25回技能検定職種の統廃合等に関する検討会議事録からの抜粋で、政策研究大学院大学教授の黒澤昌子さん(座長)の発言です。

 

この中で、私が取り上げたいことは、印章彫刻職種の技能検定が規定の受検者数に届かなかったという事の中身、数字より人の意識の問題です。

国より指摘されているのは、「業界全体として技能検定の必要性が理解されていないこと」が第一番目に問題であると考えます。

その検討会の報告書が同年5月に公表されました。

そのポイントは以下の通りです。

「3 印章彫刻職種

当該職種は潜在的な受検候補者数はあるものの、受検ニーズにつながっておらず、技能検定が長く実施されているにもかかわらず、受検申請者は減少している。業界全体としてその必要性が、理解共有されていないと考えられるため、廃止することが適当。一方で、関係業界団体が受検者拡大への取り組みなどを行っていることから、直ちに廃止にせず、令和3年度の受検申請者数が100人以上であった場合、かつ、関係業界団体の受検者拡大に向けた具体的な取り組みの結果を踏まえて、改めて本検討会に諮ることが適当。」

それを受けて、受検者100人以上を目指す運動を全国で継承意志のある印章彫刻技能士が立ち上がり、奮闘してきました。

つい先日、受検申請が締め切られましたが、おそらく100名以上の受検希望者があるようです。

私もこの運動の最中で、次の日曜日も名古屋に受検対策講習会に向かいます。

関係者や受検予定者は、みなさん頑張っておられます。

しかしながら、それに携わっているのは、業界全体からするとほんの一握りの行動でしかありません。

全体の運動として共有されていないのと、業界団体の幹部自らが受検しようとか、それを援助しようという気持ちすらなき人も多くいるという事です。

 

それと、もう一つ特出すべき事項は、「潜在的な受検者候補者数はある」と国が見ているということです。

私も名古屋に行かせて頂いて、それを痛感しております。

それを踏まえて、潜在的な受検者を掘り起こしていく為に、技能検定が継続された後に、何が必要かという事を考えていく事が、業界の技術の振興と、業界自身の発展につながり、消費者から印章への信頼を取り戻す契機になると、そこまで大きなことだと私は認識しております。

その為には、団体会員であることを問わず、広く継承現場の充実に団体は来年以降の6年間に真摯に向き合わねばならないと思います。

技能検定の中身を吟味するより、それを受検する人(潜在的な受検者候補者)を確保することの方が実質的であり、他の方面への大きな刺激になると考えます。

同じような技能検定の統廃合の崖っぷちに立たされている他業界へのヒントを作る事にもなると思います。

また、出品者が偏りをみせ、減少傾向にある大競技会や大印展への影響も、その技術競技会云々よりも、出品される人を作る事の方が大切なのです。

そう、継承現場を全国的に充実させていく事だと強く訴えたいです。

その為には、全国の技術継承現場が一つに繋がる事、そして新しい公益的な技術講習会や勉強会として脱皮していく努力を全国の仲間と交流を持ち進めていく事だと、今ならまだ間に合うことだと私は信じたいです。

posted: 2021年 10月 19日