技術は生産に結びつかなければ意味をなさない
耕人は立てりしんかんたる否定
【作者】加藤郁乎
先日から、印稿(彫刻前のデザイン)の添削のお話をしております。
これが本来の私の役割で、もっとも製作現場に近いことであります。
現在の講習生の印稿は、この13日に締め切りとなる大競技会への出品作品であります。
先日もお話したとおりに、審査員として審査には当たりますが、作品作りへの指導を少し離れていました。
作品を出品される方は、研究科の講習生に多く、研究科の先生の考え方・やり方に口を挟むようで、また講習生が講師の先生により言う事があまりにも違っていたら、何を信じて進めばいいのか分からなくなるからです。
ここ数日、添削をしていて前の感覚が戻りだして、面白くて仕方がありませんが、ふと講習生の印稿を見ていて共通点があります。
実に上手な線を出しているのです。
基本科の講習生や一部の人には、輪郭は定規やコンパスを使い手で書くようにしましょうと口うるさくいってきましたが、みんな印刷されているものやパソコンを使用しての輪郭を使用しています。
また、篆書と言う文字は、他の書体と違い、左右対称になる文字が多いのです。
偏と旁の旁のみ左右対称とかいう文字も多く見られます。
それが、きちんと左右対称になっている・・・少し前から研究科での様子をみていると、そういう事を感じてはいました。
以前の私なら、「手で書き直せ!」と突き返していたのですが、それが今の作品作りの現場であり、パソコンが通常の仕事にはなくてはならないものであり、それが具体的には製作現場であります。
パソコンを使用して、その機能を利用して判下を作製して、それを転写したものを手で彫る・・・そう言う流れが多いのではと推測します。
良い悪いは別にして、それが今の作品作りの様子なのかも知れません。
現状をよく知ろうと思います。
- どういう風にして、作品作りをしているのか?
- お店での(製作現場)での印章の作製方法は?
を今度の講習会で聞いてみようと思っています。
そして、講習会に何を期待するのか・・・これが一番大切です。
講習会に来て、上手にならないなら、講習会は意味がありません。
それは、商売に役立たない組合にはいっているのと同じことになります。
パソコンを使うことを悪く言うつもりはありません。
私も、最初から手彫りで勉強を始めたわけではなく、大野木式という回転しているピンを手作業で荒彫りする機械の練習から印章彫刻を習い出しました。
手彫りを覚えたのは、講習会に通いだしてからです。
文字を書として認知することも大切ですが、彫刻においては図形として認識した方が、実用印章技術の習得は早いと私自身も考えます。(木口は数学だと言われたO先生の言葉が今はよく理解できます)
パソコンやパソコン機能をツールとして、これからは捉えられる指導が求められているような気がします。
先生ぶって、書(?)を知り、一から筆と手でしか良い物は出来ないなどとは、私も微塵も考えていません。
最終的には、市場できちんとした印章が幅を利かせ、量販店のフォント印章が肩身の狭い思いをするように持っていく事が肝要だと思います。
ですので、製作現場を変えるためには、継承現場を変える事も大いにもとめられていると私は思います。
このようなアンケートを全国的に実施して現状を分析精査して、方向性を全国の指導者が議論できる場を持つことが大切だと考えます。
生産(製作現場)≒継承現場≒作品作り(大競技会やグランプリ)が理想であり、近似値を探すことが必要です。
印章製作現場の「しんかんたる否定」は、書を知り、筆を持ち、印刀を砥ぎ、仕上げ刀を駆使する・・・印面との対峙からであり、勿論、それを忘れることはダメだとは思います。

