実印を調整する

夏痩せて嫌ひなものは嫌ひなり
【作者】三橋鷹女

コロナの影響で、ご来店のお客様が少なくなり、ご来店されても、必要な事項だけお話して、短時間のやり取りで店を辞して頂くことが普通になっていました。
昨日のお客様とは、マスクを互いにしながら、久しぶりに一時間以上お話をさせて頂きました。
今の人の買い物は、実印や銀行印をつくる、法人を立ち上げの為の印章をつくる・・・ということだろう。
さらには、既製の認印を購入する。ネットで実印を買う・・・。
何が問題なのと聞こえてきそうですが、問題なのではなく、購入者の姿勢が印章においては、随分と変わってきたと思います。
薬は買うとも言いますが、お医者さんに診てもらった処方箋を調剤薬局に行き、調合してもらうとも言います。
実は、印章も遠い昔には、実印を調整してもらうという言葉がありました。
インターネットでいろんなものを購入される便利な時代かも知れません。
また、ステイホームでは欠かせないのも事実です。

しかしながら、自分に合ったものをゆっくりと選択したい・・・
オーダーメイドは、時間をかけて手作業でお気に入りのお店でという考え方も、その一方では多くあります。
日用品をオーダーメイドされる方は少ないかも知れませんが、それでも歯ブラシやお箸、靴やカバンも自分に合った物を持ちたいと思われる方が少なくないことも事実です。
そういう方は、商品への手間暇の味わいと共に、商品に内在する本質に触れたいという気持ちを持っておられます。
しかし一方で、それを販売する側が、商品の本質を見失っていたり、驚くべきはそれを叫び続けなくてはいけない職人自身が本質に背を向けたがる時代です。
そういうお店や職人さんがいるお店を探すことが大変ですと、昨日のお客様はおっしゃられていました。
ピンとくるものがない・・・そのようにも言われていました。
そういう時代なのかな、一抹の不安と責任を感じました。

posted: 2020年 6月 16日