デジタル大臣を印章業界に起用しては?
切るだけで貼らぬ切抜き秋暑し
【作者】後藤雅夫
新聞や雑誌の切り抜きをして、スクラップブックに貼ったことがある人は少なくなっているのだろう。
私の住んでいるマンションは50軒くらいの家庭がはいっている。
新聞販売店の人に聞くと、2軒しか配達していないとのこと、他の新聞社もあるだろうけれど、おそらくそれほど変わらない数字であろう。
昨日、印章技術講習会の篆刻を受け持って頂いている先生が、グループラインで講習生に無料のweb字書を紹介して、「高額な字書を買う時代は終わったのか。」と話しておられました。
「押印廃止」を叫ばれた方がデジタル大臣になられました。
いろいろと改革を始めておられます。
もうすこし、アナログの良さも感知する能力をお持ち頂いたらとも思いますが、デジタル化社会の歩みを止める事は、誰にもできないことだと私も強く思います。
職人の技を学ぶことにデジタルは、手を止めることとなり逆作用しか示さないと思いますが、職人の技術を発信するのに紙媒体で残していても今の社会は何の反応も示さない。
行政への申請は全てデジタル化しています。
そこに印章がいるとか要らないとかの問題は置いておいても、紙媒体の印影、技術の在り方をいくらたくさん持っていても、個人の宝の持ち腐れで社会的存在を示し得ないのです。
印章業界には、先人が残した実用印章の印譜、印影が山のようにあります。
それを一回きりのイベント(展覧会・競技会)に終わらせ、多くの消費者の目に留まることを何故か避けられてきた印章業界・・・それは、一印影は一職人にあり、宣伝すると業界の利より上手な職人、技術のある店のみに利がいくとする・・・みみっちい、小さな思考からのものでありました。
それが長年続き、姿のうつくしい印章の印影は、消費者の目から遠ざけられ、「啓蒙」が「啓発」という言葉に変わっただけで、未だなに一つの印影も提示できないでいます。
しかし、本物の印章はそこにこそあったのです。
それだけの宝をデジタル化する努力は今できるのではないでしょうか。
おそらく、しないでしょうが・・・。
業界団体のホームページには何回か前の展覧会や競技会の入賞印影が掲載されていますが、近々のものはなく、コロナを理由にやる気を感じないからです。
小さい思考とそれだけが理由ですが、それで充分な理由だと、最近周りを見ていてそう思います。
最後に、印章技術に機械化はあっても、その基本はアナログです。
すなはち、彫る力のみではなく、印影の持つ「美」の共鳴力の継承。
それを発信する力は今、デジタルにあります。
デジタル大臣を印章業界に起用した方がよいのかも・・・。
posted: 2022年 9月 6日