カタカナの印章
『印章教科書』の折込にある年表には、吉備真備(673~755)が片かなを作るとあり、その隣には弘法大師(774~835)がひらがなをつくるとありますが、どちらも現在は俗説とされています。
しかしながら、どちらも漢字から派生した日本独自の音節文字であると言えます。
カタカナは漢文を和読するために、訓点として借字(万葉仮名)の一部の字画を省略し付記したものに始まると考えられています。
また、カタカナもひらがなも、印章としてデザインするには大変難しいものだと言われています。
先達ての個展を紹介していただいた新聞を持参されて、元グラフィックデザイナーで現在は椅子職人の方が遠方よりご来店されて、ペンネームのカタカナを印章にデザインしてほしいと言われました。
職人気質の私の性格を見抜いておられ、「忙しい時はデザインを考えないでください。落ち着いて仕事に臨んでいただけるように急ぎません。」と言われました。
一月ほど後に3点のデザインをご提案すると、次のようなメールが帰って来ました。
「予想をはるかに超えるようなご提案。
素晴らしすぎます。
立派なお仕事に感謝します。
このお仕事に敬意をはらえますよう
きちんと検討させていただきます。」
デザインをお決めになった時は、
「何度も何度も検討させていただくという
とてもとても素敵な時間を過ごさせて頂き感謝申し上げます。」
というお言葉を頂きました。
現在、精魂込めた彫刻にあたらせて頂いております。
とある印鑑屋の広告に
「一文字ひともじを丁寧にデザインする」というキャッチコピーを見ました。
印章におけるデザインとは、文字(印章6書体)を調整して配置することを言います。
また、デザインとは構成と配置が肝心な作業で、形そのものを触る事は、「変化」や「変形」と言います。
漢字は篆書や印相体にすると読みにくい文字となり、ある意味素人にゴマカシが利きます。
しかしカタカナやひらがなは、消費者が見慣れた文字です。
カタカナやひらがなの文字フォントをいくら触っても、配置の妙が美を生むことを知らなければ台無しになります。
デザインとはそういうことだと理解しております。
一つ一つを丁寧に。
丁寧とは、時間と手間を要することを言います。
posted: 2023年 7月 25日