プロ野球と草野球

明日に向けて更に寒くなるとのことです。
体調を崩しておられる方が多いようです。
お気を付けください。

流石に極月の師走ともなると、忙しくバタバタしております。
が、朝刊に気になる記事が掲載されていましたので、どうしてもご紹介したくなりました。
ノーベル賞の授賞式に臨まれる本庶さんがニュースになっています。
その本庶さんの一番弟子の松田さんが、本庶さんへのお祝いと思い出を語っていました。
松田さんが97年にヒト免疫グロブリン遺伝子の全遺伝情報を解析した研究成果に対して、本庶さんは次のような祝辞を贈った。
「有名学術誌に打ち上げ花火のような論文を載せることが大事ではない。君たちも教科書に載るような仕事をしなさい」と・・・

印章業界には、技術力への評価としての展覧会や競技会があります。
来春には技能グランプリもあり、課題も公表されました。
いくらそこで金賞や1位をとっても、その技術をお客様に還元できないものであれば、それは職人の技術力ではなく、単なる自己満足の趣味になり果てる。
科学者と職人が同じではないかもしれませんが、向かう方向が大切だと思います。
自分や自分の満足、幸せにのみ向いている自己実現的なものなのか
他の為に、周りの人の為に、お客様の為に向いているものなのか
それにより仕事が大きく変わってくると思います。

昨日、ある方からご相談の電話がありました。
おじいさんがはんこ屋をしていて、道具があるので、自分ができるだろうかというお話でした。
詳しく聞いて行くと、技術を覚えてはんこ屋を経営したいというものでした。
業界内のご子弟なら、どうぞ技術講習会に来てくださいというところになるのでしょうが、おじいさんのお店はとうの昔に廃業されていて、一からということでした。
今の業界の状態をお話して、今から初めてご飯を食べていけるだけの業界環境ではないというお話もさせて頂きました。
その上で、技術講習会に来られるかどうかを検討されるという運びとなりました。
業界内の人やご子弟からすると、ある意味技術講習会や展覧会、競技会は仕事に直結するものではないのかな?
技術を覚えないと、食べていけないという切迫感を講習生からあまり感じません。
外から見れば、食べていくための技術であり商売であるのが当然だと思います。
私や同僚の講師の先生方の講習生時代には、技術を覚えることの目的がはっきりとしていたのだと思います。
明日からの仕事のためです・・・。

勿論、自分が身に着ける技術ですから自分のものです。
それは、誰から教えて頂いたのか
そしてそれをどこに向けなければならないか
また身についたものはどのようにして還元していくのか
後進に伝えて自分の技術が生きて来るということを意識出来ているのか

それがない業界ですので、次に続かない今の現状があり、それを社会が見ているということなのかな。

最後に、新聞の記事にもありますが、本庶さんが研究室のミーティングで院生らに問いかけた言葉の中に答えがあるようにも感じますので、ご紹介しておきます。
「野球には草野球とプロ野球がある。サイエンスもそうや。ぼくはプロ野球をやりたい。君たちのは草野球になってませんか?」

posted: 2018年 12月 7日