印章の正しき価値を取り戻そう!

今回の京都大の本庶さんのノーベル賞の授賞式を通して一番印象に残ったのが、在スウェーデン日本大使館が主催した記者会見での日本の製薬企業の現状についての発言でした。
「研究所を廃止し、外から(創薬の)種を拾ってくる方向にシフトしている」と指摘。
また「トップがそろばん勘定しているだけの人ではまずい。サイエンスが分かる人でないと、(研究の)価値が分からない」と注文を付けたと報道されています。

トップとは、物の本質を理解し、それを発信できるだけの能力のある人のことを言うのだと思います。
本庶さんの場合はサイエンスであり、私の場合は印章です。
印章への理解度が低い人、それをそろばん勘定にしか置き換えることのできない人がトップになったり、そろばんを貼り付けた印章を発信するならば、長い目で見ると、印章の継承はあり得ないと考えます。

本庶さんにとっての研究者は、印章にとっての技術講習会や研究会と言って過言ではありません。
そこに一番力を注がないと、技能検定は勿論のこと、全国グランプリや展覧会、競技会も無くなっていくでしょう。
技術の継承とその思想が無くなるということは、どういう事なのかを、今真剣に考えないと大変なことになります。

派手なパフォーマンスや宣伝行動が、印章制度や文化を守れると思っているのでしょうか?
勿論、技術だけでは印章は成り立ちません。
大切なことは、何を彫るかです。
我々は、何を彫っているかということです。
印章業者は、何を扱わなければいけないかということです。
文具や玩具を扱っているのでしょうか?
芸術作品を扱っているのでしょうか?

いえ、印章を扱っているのが印章業者で、それを彫刻しているのが印章彫刻技能士や職人ではないでしょうか!
だから、価値ある印章がつくれる
だから、世にひとつだけの印章が販売できる
他事は、他の人やパフォーマーやおもちゃ屋さん、芸術家がなさることだと思います。

posted: 2018年 12月 11日