中身を充実させる意識と努力と継続と

青蛙 おのれもペンキ ぬりたてか
【作者】芥川龍之介

昔は、「ペンキぬりたて」の張り紙をよく見たものですが、最近は見なくなりましたね。
「ペンキぬりたて」は初心者マークのように、表面上は綺麗な色でテカテカに光っていても、まだ中身のない状態を表しているのかなと推察できます。
芥川もそれになぞらえて、中身のない自分を内観しているのだと思います。

見栄えをよくすることは大切な事だと思いますが、中身があっての見栄えです。
中身もないのに、全体の機運に乗せられて色を塗り過ぎると、異様な感じを与え、気が付くと消滅しています。
中身があってこその装飾です。
装飾を考えることは楽しいかも知れません。
しかし中身を充実させることには、意識と努力、そして継続が求められます。
そしてそれは、目に見えない地道な世界観や思想が必要です。

世の中に、青蛙を見ておのれの不甲斐なさを感じた芥川のような人が少なくなってきているのは事実だと思います。
そういう人が増えないと、日本文化の継承はあり得ないと感じています。
確かに人は、百人十色ですが、一人ひとりが好き勝手なことをしていたら、その業や文化は一人ひとりの個人の楽しみでおわり、次世代に繋がることはあり得ないのです。
個人の表現の仕方、或いは生き方の違いなのでしょうが、私はそういう風に感じます。

posted: 2019年 5月 24日