そして「はんこバカ」はいなくなった

相変わらず、テレワークの邪魔もののように印章が報道され、話の筋の行末が電子印鑑、そして最後に某文具メーカー?の会社名の宣伝?・・・と朝から嫌気がさすような情報番組の一コマでした。
家内が、「職人さんのことやっているよ!」と『サワコの朝』を見てみると、左官職人・久住有生さんが出演されていました・・・途中からでしたので、見逃し配信を見ました。

私は、外から印章業界に入りました。
入って驚いたのは、「はんこバカ」というような、そればかりを考えている人が少なく、職人気質や徒弟制度の在り方を批判する若手商売人が多かったことです。
印章を見つめ、そこから明日を見出すのではなく、他の経営論や流行を追い求めることが時代を生きる業界人と言われていた。
手技に憧れ、職人気質を追い求める私としては残念でありました。
時間を忘れ、寝食の時間を削り、厭きずに印面に向かい、技術の事を話していたい私には興醒めな業界でした。
良い先生にも恵まれましたが、技術の事が軽視されている業界だなと思いました。
そのような中、技能グランプリにも出場しました。
今の参加選手よりも少なかったが、もう少し質が高かった。
一生懸命に印面に向き合う技術者がドンドンと減っていった時代です。
その当時の仲間は、今では戦友なのかも知れません。
また、その当時の先生、師匠らも私が年を取ったのと同様に年を取られた。
また恩を返せずに、あちらの世界からエールを送ってくださる先生も多くなりました。
今の事態はさらに悪化し、技能検定も満足に出来ない業界になり果てている。
技術をしていると、骨董品のように言われる。
技術、技術というと疎まれる。
しかし、どう考えても印章は技術の産物
職人の創作により唯一無二を堅持できるアナログの商品
それを何とかしてパソコン機能を駆使してオモチャのようなハンコをつくりだして、却って社会から信用を失っていく印章とその業界
市場にはパソコン印章やフォント印章が乱売され、
そのオモチャのようなハンコを文化だとする業界内部よりの見方・・・
消費者からは呆れられて、きちんとした印章を提供してくれる職人の姿が見える印章店を探すのは至難の業だと、私も時折、お客様から叱責を受けます。
「はんこバカ」は、益々少なくなりました。
技術をしている者のなかでも、呆れられるのが「はんこバカ」です。
はんこのこと、印章のことしか考えていません。
視野が狭いとも言われます。
他の業界、技術を大切とする業界には
まだまだそういう人がいるんやなと思います。
印章業界の人達の技術やその継承への意識の低さを見聞きすると、技術バカの他業界の人との交流の方が自分を高めてくれると、意識の低さに今を投げ出したくもなります。

でも印面しかない
印面に向き合うことに厭きない

左官職人・久住有生さんは・・・
壁しかない
壁に厭きない
よければ、「見逃し配信」を見てください。
https://dizm.mbs.jp/title/?program=sawako&episode=131

posted: 2020年 4月 18日