どうか、印面を見つめてください
仕事量調整と講習会の添削課題の集計の為に、休日出勤しています。
昨日もとあることから東京より全印協の技術委員長から電話を頂きました。
お尋ねすると、大競技会審査結果の集計や事務仕事に集まっておられるようでした。
感染者数300に迫る勢いの東京で、です。
自分が感染するだけでなく、人にうつす可能性があるから、集まらないことをモラルとする傾向があります。
何も用事もないのに飲み会で集まるとか、問題になっている旅行で集まるとか・・・そういうことはすべきでないし、理知高き大学はまだリモート講義が続いています。
正しい事であると思います。
しかし、技術講習会のこととか、大競技会の実務は集まらないと出来ないのが実情です。
そういう危険性を冒してでも、それに携わっておられる方々に心より拍手を送りたいと私は思います。
何かの取材を受けると、仕事風景を写真に撮ってくださることがあります。
例に挙げた写真は、雑誌『PHP』のものです。
後藤カメラマンが上手にとってくださいました。その節は、お世話になり有難うございました。
少し変な説明に使わせて頂きますが、写真の良し悪しを言うのではありませんので、ご了解ください。
普段は印面に向かい仕事をしていますが、撮影には私の顔も必要です。
印材と仕上げ刀を握り、顔を上げた状態でないと撮影にはなりません。
この姿勢が、今の印章業界であると思います。
即ち、印面を見ていないのです。
その印面を唯一無二にしてご使用者にお渡しするのが、我々の商売です。
その唯一無二の印面を作り出すのは、印章彫刻技術とその本質を貫くモラルがあってこそ守られてきたことです。
印面を見ないでよそ見して、彫っているようなふりをして、スローガンや年間計画では技術や技能検定、技術講習会と打ち出してはいるが、誰も印面を見ないで、経営面の在り方を他の商売と合わそうとして来たのではないでしょうか。
今、リモートワークの阻害物としての印章から、デジタル化の障壁として、多くの起業から脱押印を宣言され、そのノウハウセミナーがネット上で様々な形で盛んに開催されていることへ、一印章業界のみが対峙していくことはとても不可能な状態になってしまいました。
今、これは社会問題として印章の在り方を捉え直さないと、更に大変な事態に繋がりかねないと私は、ここに予言致します。
それは元に戻りますが、印面です。
印面を保証しているのは技術でありその技術を有しているのは職人であります。
けっしてデジタルやコンピューターやパソコン機能ではありません。
そのことは、厚労省の第25回技能検定統廃合検討会の報告書にも明確にしるされているということは、国の見解であります。
デジタル化の中に印影が取り入れられるかどうかよりも、その印影の唯一無二を保証している実証としての技能士の数を論拠に、そして技能検定が廃止されれば、更にそれに拍車がかかり、次の一手に迫り、全ての押印廃止の方向に動き出しかねないと私は予言致します。
自慢ではありませんが、私の予言はこれまで、ほぼ当たってきています。
印面を見つめる目がない印章業界。
今、コロナの影響で技術講習会や研究会が開けない状態です。
大阪はこの7月で、5か月間の休講となっています。
していることは、通信添削2回です。
今技術の講習や研究会は、業界が狭くなりましたので、それほど多くありません。
主だったところは、全国で片手で数えられるのではないでしょうか?
そういうことも、国は知っていると思います。
デジタルの中に印影を残すスゴイ研究をされている企業さんもあるとお聞きします。
それが可能になっても、職人がいないことを論拠に押印がなくなれば、その印影も消えゆく定めではないでしょうか?
理知の最高峰の大学はリモート講義をしています。
この頃チト忙しく潜れませんが、リモートでしかできない色々な事をしています。
専門外の分野の教授や社会人を講師に招いて、画面に表れてもらったりとか・・・
スゴイ研究ができる企業が印章業界にあるなら、そういう見識を有しておられる業界人がおられるなら、足もとの消えかかっている技術の灯に力を貸してもらえないでしょうか?
また、全国組織はそこに目を向けるべきだと強く感じています。
継承現場は人もお金もなく、そこで一生懸命になられている数少なくなった「継承の意志」を持つ人のみとなっています。
どうか、印面を見つめてください。
posted: 2020年 7月 19日