印章彫刻工としての誇り

本日も仕事量調整のために、休日出勤です。

電話が鳴り、出てみると、「会社のゴム印、住所や社名とかの・・・何時間で出来ますか?」という内容でした。

そういう電話もありますが、昨日は石川県から来れたお客様もありました。

 

印章を作製する人のことを、何というのだろう。

ハンコ職人、はんこ職人、印章彫刻職人、印章彫刻工・・・

ハンコ作家、はんこ作家、印章彫刻技能士、現代の名工・・・

はんこ芸術家、篆刻家、書家?・・・

技術者、技能士、技術師・・・

ブログに書く時には、その場の雰囲気で使用してきた感があります。

ちなみに、技能検定という国家検定をしている国は、どのように規定していると思いますか?

技能士というのは、間違いですよ。

技能士というのは、その方の技術の量的な度合いを示す呼称で、一級、二級があります。

技能検定試験を受けて合格すると、技能士と名乗っていいですよと言う意味です。

厚労省からの「現代の名工」では、技能者という言い方をします。

技能士でなくとも、「現代の名工」はもらえるからです。

だから、「卓越した技能をもつ労働者」という表現をされています。

それは、印章に限ったことではなく、いかなる職業においても、そういう表現がされます。

黄綬褒章の賞状には、明確に「印章彫刻工」と区分されています。

国は、印章を製作する人のことを「印章彫刻工」としているという事になります。

「現代の名工」と名乗る人がいても、私は「印章彫刻工」だと名乗る人はいないと思います。

そこからは、「職工」というイメージがあるからです。

『男はつらいよ』の映画のなかで、寅さんが裏の印刷工を捕まえて、「こら!職工」とか「労働者のみなさん」と言っているイメージがあります。

それを、嫌がる方が多いと思います。

でも、そういう側面があるから印章は成り立ち、国が成り立ってきたと思います。

私の中では、職人や職工というイメージは、○○作家さんや○○家と呼ばれる先生より、コツコツと同じ事を厭きなく繰り返して技を積んでいくというイメージが強く、大好きなことばです。

永六輔さんが愛した言葉も「職人」という言葉であり、在り方であると思います。

 

「〈私もいっぱしの大工になりました〉って威張っている職人がいたけど、〈いっぱし〉というのは〈いちばんはしっこ〉ということなんだよね。

威張って言う台詞じゃない」

 

 

「子供は親の言うとおりに育つものじゃない。

親のするとおりに育つんだ」

 

 

「彫り3年、研ぎ4年。

女房貸しても砥石は貸すなって教えられました」

 

 

「職人が〈何かすることありませんか〉なんて言うな、おまえ。

すること探して、黙ってやってろ!」

 

永六輔『職人』(岩波新書)より

 

そういう世界観が大好きです。

posted: 2020年 7月 24日