印章の心は真っ直い(すぐい)
朝ドラ『ちむどんどん』の中に、中原中也の詩が出て来ています。
今日は、「山羊の歌」無題から重子の気持ちを表現されていました。
中也の泰子への気持ちを表した詩なのですが、私はどうも「彼女の気持ちは真っ直い」という表現に心囚われました。
長くなりますので、二節の一部をご紹介しておきます。
彼女の心は真つ直い!
彼女は荒々しく育ち、
たよりもなく、心を汲んでも
もらへない、乱雑な中に
生きてきたが、彼女の心は
私のより真つ直いそしてぐらつかない。
(後略)
無理やりな話で、中原中也に怒られそうですが、彼女を印章に置き換えて見たくなりました。
印章技術に一生懸命な方はまだおられます。
そう信じたいという処もあります。
技術に一生懸命なのは、真っ直い(山口弁かもしれませんね)気持ちがあるからです。
8月8日にNHK特集ドラマとして『二十四の瞳』が放映されます。
この大石先生のような「真っ直い」気持ちで二十四の瞳の子らに向かい会った先生は、何をするにつけても私の目標であります。
大石先生は、教え子の為に戦争や貧困、差別に声を上げます。
戦争反対ありきではなく、教え子の為に戦争を嫌い、「アカ!」と言われようが生活綴り方教育の『草の実』を実践されます。
私も「真っ直い」気持ちで、今日も印面に向かいます。
そして、「真っ直い」気持ちの後進の人が少しでも多く出て来てくれることを心より期待します。
少し2節の後半を補足しておきます。
彼女は美しい。わいだめもない世の渦の中に
彼女は賢くつつましく生きてゐる。
あまりにわいだめもない世の渦のために、
折に心が弱り、弱々しく躁(さわ)ぎはするが、
而(しか)もなほ、最後の品位をなくしはしない
彼女は美しい、そして賢い!
甞(かつ)て彼女の魂が、どんなにやさしい心をもとめてゐたかは!
しかしいまではもう諦めてしまつてさへゐる。
我利々々で、幼稚な、獣(けもの)や子供にしか、
彼女は出遇(であ)はなかつた。おまけに彼女はそれと識(し)らずに、
唯、人といふ人が、みんなやくざなんだと思つてゐる。
そして少しはいぢけてゐる。彼女は可哀想だ!
posted: 2022年 8月 5日