ほんとうに親切な品

平凡に咲ける朝顔の花を愛す

【作者】日野草城

 

お店でのコーヒーブレイクは、紙のドリップパック(写真)を使って淹れている。

これを美味しく淹れることが、家内への自慢で、家内も美味しいと紅茶通からコーヒー党に転向したくらいです。

これが値上げになっている。

まずは、個数が少なくなった。

人気商品なのか、そのうえ姿を見なくなったと家内。

メーカーも必死なんだろう。

「インスタントコーヒーにしては?」と寂しいことをいう。

違うメーカーのものを買ってきてくれた。

おいしくない・・・。

ほんの少しの贅沢な話かもしれないが、今まで通りにいかない。

あれだけ物が溢れ、大量消費の時代を過ごしてきたのに、今や物価があがり物もない。

 

当店も来店者数が減って来ています。

まだ値上げはしておりませんが、値上げを検討せざるを得ない周辺状況です。

来店者数の減少は、物価高だけでなく、印章を取り巻く環境の問題もあります。

いや、それが大きいように私は感じていますが、家内は他事のせいにしてはいけないと言います。

それも然り。

 

先日ご紹介させて頂いた花森安治さんの『灯をともす言葉』(河出書房新社刊)の「造ること、売ること、買うことについて」の項、108頁には次のようにあります。

 

 

 

 

 

 

これからの不景気を

切りぬけたかったら、

ほんとうに親切な品を

作ることだけを考えなさい。

そういう商品だけが、

過去の不景気を切り抜けてきたのだから。

 

・・・中略・・・

 

いまは、造るもの・売るものと、

買うものとの間に

心がつながっていないんだ。

 

平凡な中に暮らしがあり、それは坦々とした日常をつくっていっている。

平凡とか、普通が難しい時代なのは、おそらく花森さんが言うように、心がつながっていない状態が彼の生きた時代から、それが修復されずにずっと続いているのだろう。

でも、それも彼が言うように、坦々と「ほんとうに親切な品」をつくり続けることが大切なのだろう。

平凡に咲いているようにみえるが、朝顔はそのことに必死なんだろなぁ。

今日も印面に向かえることに感謝です。

 

posted: 2022年 8月 24日