方言と印章
連続テレビ小説『おちょやん』が始まりましたね。
私の中では大ヒット番組です。
それは、大阪弁という言葉を大切にしてくれているからです。
少し前にも書いた、「だんない」や今日の「ほげたが達者」(口が達者、よくしゃべる、反論がお上手)には驚きました。
どれも嘗ての(私が幼少期の)大阪で日常的に使われていた言葉で、今はほとんど使われなくなった大阪弁です。
連ドラでは、嘗ての大阪を舞台にしたものが多くありました。
いとさん、こいさんのような船場言葉は出てきたような気もしますが、日常会話の言葉を毎回大切に扱ってくれることに感謝いたします。
昭和15年、柳宗悦柳ら日本民芸協会一行が沖縄を訪問し、当時の沖縄県で、方言を否定し標準語励行が鳴り物入りで推進されている事態を批判した沖縄方言論争がありました。
柳宗悦は、当時の特高警察に捕まり尋問を受けましたが、意を曲げずに方言のもつ文化的価値を力説し、標準語の一方的な励行は将来に禍根を残すものであると主張。
この論争は、やがて東京の論壇も巻き込んで、標準語、国語と方言の関係を問う一大論争に発展していきました。
言葉のみでなく、あらゆる事柄を一つの共通するものにすると、一見合理的で利便性があるようにも見えますが、その土地の個性や思考、ひいては文化をも否定していくようになります。
それが今、グローバル社会の名のもとに国際的なる共通性を求めて、各国の文化を否定し始めています。
否定とは、言葉にすると完結しているように感じますが、消し去られるということです。
文化文明の発展により自然に淘汰されるのではなく、思想や政治により統率されるということは、後々に歪みを生じさせることだと思います。
今回の「脱ハンコ」と旗頭を上げた国策は政治的圧力による文化変容への触手のように思えてなりません。
印章業界には「ほげたが達者」な人もおられるのになぁ~と不思議でなりません。
気が付けば、社会が変わっていた。
それはコロナ禍後の日本の社会や文化に何をもたらすこととなるのでしょうか。
明日も『おちょやん』楽しみです。
posted: 2020年 12月 7日