基本と全体と関連

常日頃から・・・印章はその文字とレイアウトが肝心である・・・とお話ししていますが、あくまでそれは今非常に軽視されていることで、誰もいわないので、声を大にして叫んでいることです。

しかしながら、その文字とレイアウトが良ければその過程はどうでも良いということではありません。

 

良い文字(たとえば書の大家の文字)がコンピューターのソフトで販売されていて、それを上手く配分(レイアウト)できたとして、それをドリル型の彫刻機で彫って・・・いい印章が出来た・・・そうは問屋が卸さないのです。

 

印章が出来るまでの過程は、文字の選択→文字の配置・レイアウト→平らにした印面にそれを鏡文字で書きこむ→基底刀(印刀)で荒彫りをする(荒彫りと言っても荒く彫るわけではありませんが)→その後、トクサ板で面を調整し、墨打ち→仕上げ→補刀(浄刻)・・・簡単に言ってこれだけの過程があります。

 

ほんとうは、どれも大事で、全てが関連しているのです。

そのどれかを合理化(機械化)しても私は良いと思いますが、関連であり一過程もおろそかに出来ないということです。

物事は、全てがその関連によって形成されます。

一事象のみを取り出して論じることは本来おかしく・・・たとえば文字のみとか、荒彫りのみとか・・・

 

消費者の皆さんに一番関心を引くことは、荒彫りをしているとか仕上げをかけているとかという作業風景や文字について論じるその起源論です。

それも大切ですが、全体の関連の中の一コマであるという認識を常に持たなければ、印章という大きなカテゴリーは啓発することは、非常に困難であるということです。

 

印章彫刻の修行もそうです・・・荒彫りという基本をとばして、仕上げのみを勉強しても上手くはなりませんし、文字やその成り立ち、そしてそのレイアウトの字割を完全に無視して、感覚的な字入れをしても文字に落ち着きがなく変なハンコになってしまいます。

 

それは、仕事の基本を知るということです。

基本を知らないのに、コンピューター上の画面で、他人が作った自分のモノでない既製の文字を動かし個性ある印章・・・それは、ある過程が欠如したうぬぼれであり、我流であり、本物(ほんまもん)ではないということです。

基本と全体を知り、そして各所を述べる。

 

そしてもう一つ、今を知り、そして印章の本義を述べるということです。

現状から遊離している独論は意味を持たないということです。

 

いろいろと世知辛い印章業界です。

現状に即し、言いがかりや難癖ではない、現状に即したご提言を期待したいものです。

 

 

posted: 2014年 2月 22日