文字で勝負できないハンコ屋

「あなたはまだ文字だけのハンコで満足していますか」と問う某ネットショップのフレーズを印章の本質的意義から逆説的に問うと

「あなたのお店は文字で勝負できないので、イラスト入りをオリジナルと呼び文字はすべてパソコンソフトを使用しているのですか」というフレーズが完成します。

文字はどこのお店でもパソコンソフトの文字を使用し、「当店はその文字をマウスで修正?していますよ。」というところもその骨組みはソフトですので、そんなに変わり映えするはずもなく、そこで、文字と戦えないというか文字がわからないので、イラストを入れたり、猫の形に文字を歪めてレイアウトしたり・・・・その一文字一文字を取り出してみると・・・・文字が泣いていますよ!

細かなイラストもキャラクターのようなものも・・・その版下作成能力があれば、彫刻機につなぐとそれを表現してくれます・・・別段すごい技ではなく・・・名刺のレイアウトやロゴ作成の要領で出来てしまうものです。

そこに本当のオリジナル性や世界に唯一つだけのものであるという印章本来の意義はありません。

このような駄印は、いくら周りの絵やオリジナルという言葉のみでごまかして見せても、中身は文字の美とそのレイアウトの妙のない駄印にすぎません・・・だから大切に扱おうという気持ちは自然と遠のいてしまうのです。

真の印章や正印と呼ばれるものは、美しい立派な印面を持つこと、刻法とその刻者の精神が印面に現れるもので、捺印して自らも先方もその風格の美をシェアできるものこそ立派な印章であります。

文字との格闘を日常している真面目なハンコ職人さんは、「文字だけで満足」でありますし、その持つ美とレイアウトの妙に日夜研鑽を重ねているのです。

 

posted: 2014年 8月 28日