第68回大印展が始動しました
天が下に風船売となりにけり
【作者】三橋鷹女
子どものころ見かけた風船売は、何処へ行ったのかな?
ハンコ屋さんが風船売になりにけり
風船売を卑下したり、空気を不要なものというのではありませんが、ハンコ、印章が価値無きものになってきています。
デジタルと共存しなければとか言う方もおられますが、デジタルが下に風船売になるような気がしてなりません。
そういう世情のなか、第68回大印展が始動しました。
コロナ禍においてどうなるかは分かりまんが、昨日のリモート審査会にて課題が決定し、規定書を作製しました。
リモート審査会といっても、ファックスと電話でのやり取りで、一字一字の確認をしましたので、長時間かかることとなりました。
ファックスの前で待機してくださった審査員のみなさま、コロナ感染拡大に歯止めが利かなくなった大阪の組合事務所での作業にあたられた理事長はじめ理事の有志のみなさま、有難うございました。
ともあれ、大印展は動き出しました。
風船売となりかけている多くの出品者のみなさまの手を動かして頂き、価値ある力作をお待ちしております。
・・・大印の一技術委員より
追伸:大印展の部門には「電子印鑑の部」や「デジタル判下部門」はございません。
posted: 2021年 4月 12日
普通って何ですか
さくらさくらわが不知火はひかり凪
【作者】石牟礼道子
お天気のよい大阪ですが、コロナ感染者数の増加が第4波を示しているようです。
第4波かも知れませんが、昨年の第1波と時期を同じにします。
昨年、3月に大印展の課題がリモートにて決まり、4月24日には組合理事会にて大印展の中止が決議されています。
今年の大印展の開催が理事会で決まった直後に、大阪の感染者数が激増してきて、この5日より「まん防」の適応が決まりました。
11日に課題を決定しなければならないという手前に、昨年同様の事態となりました。
そして、昨年同様にリモートでの課題決定審査会が決まりました。
前途多難を感じています。
こんなところで内部事情を言うなという声も聞こえてきそうですが、敢えて渦中の人として大印展の行方を発言しておきたく記します。
大印展は、毎年秋の文化の日に開催されている大阪府印章業協同組合が主催する展覧会です。
69年前は、大阪のハンコ屋さんの技術講習会での発表の場として組合先輩方の尽力で行われた展覧会でした。
それが、全国展へと発展していき、今年68回目を迎えようとしています。
その間、印章業は大きく発展していき、その対象を印章技術の関連部門を増やし、書道、判下・・・その後さらに刻字をいち早く取り入れたのも大印展でした。
それは、印章業界が大きくなって行く事と比例しての事でした。
しかしながら、今、業界は疲弊しています。
業界団体への加盟数が激減するなかで、大阪組合の組合数も同じくとしています。
業界全体の運動量が減ってきているのに、今まで通りの事をしていては続かないというのが私の持論です。
少ない組合員数・・・しかも、その中で技術の事を常に考えている人が更に少なく、その人ばかりが負担となっているのが現状です。
怒られることを承知で書き続けますと、今、唯一無二を守る技術・・・実用印章の在り方が社会から大きく問われている事への対応が切実に求められています。
部門を縮小して続けるべきだと思います。
実用印章以外の部門は、他の展覧会(書道に付随す展覧会)があります。
実用印章の展覧会という社会への発信は、大印展や大競技会という印章業界発信以外の他にはありません。
それとコロナ禍です。
コロナ禍での展覧会の在り方を模索する必要性があると思います。
今年の大印展は理事会挙げての開催とする事が決まりましたので、それにたてつくつもりはありませんし、決まったことは実行したいと思います。
ただ、現状と今後の在り方を考えて頂きたく思い記しました。
また、昨年の全印協の大競技会もコロナ禍で審査会が出来ずに、大変な状況でありました。
中身は大印展と同じですので、そこにも言える事ではないかなと考えます。
組織を通じての提案もしております。
それでも、敢えて地球マークで私は発信いたします。
悔いを残さないために。そして続けるために。
posted: 2021年 4月 3日
とても心配しております
第4波という声が聞こえてきました。
「第68回の大印展の開催が決まりました」とお知らせしましたが、大丈夫でしょうか?と、とても心配しております。
毎年、大印展は11月3日の文化の日に開催しています。
その日は、作品展示と表彰式、懇親会があります。
その日も裏方は忙しくなるのですが、その日のみで大印展は成立しているのではありません。
作品を出品者に提出してもらわないといけませんので、製作期間を半年間設けています。
その為には、課題を3月に決めなければなりませんでした。
ところが、年の初めからの緊急事態宣言で課題決定の審査会の機を逸してしまいました。
4月11日に課題を決定することになっていますが、それでも4月に課題公表の規定書を出しまして、一月遅れとなります。
9月の締め切りや審査会までの日にちが少なくなります。
そして、今年は来年初頭の技能検定受検のための練習もあり、出品者は大変です。
そういう中、第4波の声・・・。
嘗ては、己の技術を試す場としての展覧会や競技会、誌上講習会などが多くありました。
業界の量的運動量、キャパが大きかった時代です。
その頃は、出品の場が多く大変だったが、それを喜びとして励めたものです。
作品発表の場や修錬の場が減り続ける中で、今度は、わずかになった作品発表の場が、仕事と重なり大変だ!これ以上出来ない!という言い訳が聞こえてきます。
なら、やらなければと思うのですが、後継がさらに減りますので、緩やかに教育的に対応しなければなりません。
そうこうしているうちに、業界の運動量が減るなかで、継承現場は持たなくなり、
今や、それを支えられなくなってきています。
どうなるのだろうかと、他人事のようにつぶやくしかないのだろうか。
そういうつぶやきも、こういう文章がいつまでも残るところや地球マークで公表するなという声もあります。
しかし、何処でつぶやけば、変わっていくのだろうか・・・。
私には理解できないので、いろんな所に地球マークで、つぶやき続けるしかありません。
今や、キャパが小さくなったので、いろんな事をせずに、絞れるところに集中しないと継続できないと思います。
人も変わり、やり方も変えていかないと「仕事が忙しく練習が出来ない」とする人には未来が見えないと思います。
私などは、一つの老害であります。
いくらミケランジェロやラファエロが素晴らしい美術作品だとしても、葛飾北斎の画風にラファエロを合わせて表現しても、滑稽なものにしかなりません
それを表現できる力量が自分にあるのか?
自分の力量を考えながら表現していく、名人上手の文字の骨格をいくら取り入れても、自分の力量に合わなければ、それはかえって自分の作風をみだしていく猿真似にしかなりません。
名人上手から何を自分に取り入れるのかをしっかりと持つことが、本当は一番難しい修業であります。
自らのキャパに合う方法の模索・・・
そういうとこらへんを、とても心配しております。
posted: 2021年 3月 30日
今年の大印展の開催が決まりました
花よ花よと老若男女歳をとる
【作者】池田澄子
良いお天気の大阪です。
それこそ花見に出かけたい気分ですが、大阪はコロナ感染者が再び増加し始めています。
コロナや社会の在り方に関係なく桜の花は毎春咲いてくれます。
花よ花よと寄っていくは、陽気な人の意識です。
その意識も、自然に対する意識と物や事象に対する意識は、違うものだと思います。
もの作りは、社会から請われてされるものです。
印章もそうです。
社会に必要とされるから、職人が彫刻するのです。
その必要とされる意識は、放置しておいたのでは、いずれ無くなります。
自分が名人上手だとされる人でも、お客さんがなければ、生業として成り立ちません。
だから意識を作るために、その情報を発信しなければなりません。
大阪の印章組合が発信を始めた「大印展」(嘗ては、「大阪府印章技術展覧会」という名称でした)は、昨年68回目を迎えるはずでした。
コロナ禍により、開催できませんでした。
今年は実施したいという強い想いは、組合技術委員会にはありました。
しかしながら、年頭よりの緊急事態宣言に押され、3月にあるはずの課題決定審査会の機を逸してしまいました。
いろんな議論をして、私は大印展の行事としての縮小よりも、中身をスリムにしないと持続して行けないという論でありましたが、それは却下され、今までと同じように第68回大印展を開催することが組合により決定されました。
4月11日は、約一月遅れの課題決定審査会となります。
出品者のみなさまには、何かとご心配をおかけしておりますが、4月中には規定書がお手元に届く予定です。
今年も力作のご出品を何卒宜しくお願い致します。
posted: 2021年 3月 27日教え教えられる喜び
土筆生ふ夢果たさざる男等に
【作者】矢島渚男
昨日は、今年初めての技術講習会でした。
昨年は、コロナ禍により4回しか対面講習を行えずにいて、今年になり再び緊急事態宣言により開催できずにいました。
昨年は、リモート講習をしたり、通信添削をしたりと工夫をしていましたが、徐々にではありますが、疲れが実施者側にも受講側にも出てきました。
対面講習をすると、少し元気が出ます。
世の大学は休講状態で、一度も大学に行かずにリモートだけで嫌気がさし、休学、退学をされる若い人が多いと聞いています。
何となくわかる気がします。
コロナ禍だからという理由は理由なのかも知れませんが、コロナ以前から継承現場が危機的な状況だと述べてきました。
コロナは、そういう状態を内在している問題を露呈してくれる役割を持ちました。
教えて頂ける喜び
教えることのできる喜び
両者が共鳴して成り立ちます。
こんなことは、決してデジタル化できないことです。
共存や融合などありえないことです。
デジタル化は継承現場の危機を助けてくれるのでしょうか?
デジタル化は危機に瀕している技能検定を助けてくれるのでしょうか?
技術が印章の、印章業の全てではありません。
技術は、印章業の基礎体力で、土台であります。
土台が貧弱になり、がけ崩れがあちらこちらで起きています。
さて・・・「夢果たさざる男等」は、どう立ち向かうのでしょうか。
そして、あちらこちらの崩れている土台を補修工事して、はたしてそこから、その土手からは土筆が顔を出すことは出来るのだろうか。
posted: 2021年 3月 22日コメントありがとうございます。
ブログの”手とコンピューター”という記事に頂いた「開運業者撲滅委員さん」からのコメントです。
「戦中や震災後、今回のコロナのように社会情勢が不安定になると心の安定を求め新生活、新様式なる言葉が溢れてきます。今までの分かりやすい伝統を否定し自分のいう事を正しいものと強調するのはいつの世も変わりません。戦中の米は贅沢、代用食が正義みたいなところですが結局必要なものは残ります。印章は太古の昔から便利で信用ができるものとして現在まで存続しましたが悪でも何でもなく皆が使うものを利用して開運や同形印等でその存在価値を台無しにした業者が悪いのです。今こそ印章のあるべき姿を世間に示す絶好の機会にできるよう私も応援できればと思っています。」
コメントへの私の返答・・・
「私も一応は印章業者ですので、業界へのお叱りの言葉には悲しい思いもあります。
しかしながら、おっしゃる通りだと思います。
デジタル化の恩恵を受けるのは、はたして国民なのでしょうか?
今の国会を見ていると、一部のデジタル族であるようにも思うのですが、デジタルは利便性や通信制、遠隔性に優れています。
それを利用されることには、反対はいたしませんが、行政手続きの簡素化の名の下に、認印を廃止されることには、合点がいきません。
同業の中には、譲歩してデジタルとの共存を言われる方があります。
デジタル化は、既に印章業者の日常を支配するまでにもなり、パソコンの前に座り、それを駆使して印章製作をされると、どうしても便利だ、早いとなってしまうことは仕方がないのだろうが、全体でそれを容認してしまうと、認印くらいはから、崩壊への大きな穴が開いて行く突破口を作ってしまったと私は残念でなりません。
応援賜りまして、誠にありがとうございます。
私は微力ではありますが、きちんとした印章をお求めになられるお客様の信を示すにふさわしい印章を精魂込めて作らせて頂きたいと、精進努力してまいります。」
posted: 2021年 3月 8日25年の月日が培った職人道徳
二月尽雨なまなまと幹くだる
【作者】石原舟月
25年前の2月に船出した「三田村印章店」
老舗に比べると、とても短い25年ですが、25年前の2月はとても昔に思え、四半世紀と名乗ると、今の自分に合っているような気がします。
先日の25周年記事は、家内の文章ですが、それを借りるなら、商売の「い・ろ・は」も分からない父ちゃん母ちゃん商売でした。
お店と言っても、前売りのお客様が多くあるわけでもなく、外商をして得意先を伸ばすという営業力もなく、どうなるかわからない、ただ好きなだけの印章技術を前面に押し出して前を向き進んできました。
技術関連の先生、先輩とのお付き合いも多く、そこから派生して印章組合活動にどっぷりと嵌っていきました。
毎月の技術講習会、技能士会の活動、毎年の大印展では忙しく、子どもの運動会にはほとんど参加していなかったと思います。
しかし、先生、先輩から教えて頂いた職人道徳は、今も私の中に生きています。
自分さえ上手ければよいでは、技術というモノは自分の中に入らない、先人、先生、先輩からの教えがあり、それを引き継ぎ次に伝えることで、今の自分が存在させて頂いている・・・だから、唯一無二を守るという最低限の道徳が守られてきたのだと思います。
25年が経ち、若い頃と同じような活動は出来かねますが、私の中に養われた職人道徳は健在です。
ただ業界の弱体化の進行は、私が考えているより早く、職人道徳など考えている間もない現役メンバーをみていると、これからの自分の在り様を考え直さざるを得ない状況かなと危惧致します。
休講続きの講習会、意欲の低下は致し方がないのでしょうが、大印技術講習会の木口講習生が私だけになった時を思い返し、それを伝える努力はまだ不完全であったと、反省点も大いにありです。
これからの「三田村印章店」は、そうした業界環境のなか、職人道徳という羅針盤を掲げて、更に前に向けて、お客様と共に歩んでいきたいと思います。
これからもよろしくお願い申し上げます。
posted: 2021年 2月 26日