印章は誰が作り、誰が使うのか?・・・そのことを忘れずに!

何もせぬごとし心の冬支度

【作者】三橋敏雄

 

平井大臣からプレゼントされた「押印廃止」というハンコを河野大臣がツイッターで発信され、物議を醸し出しています。

これも政治的圧力で押さえるのかなと思っていたら、じんわりとですが、ニュースになり始めています。

毎日新聞の朝刊にも載っていました。

今晩には、NHKのクローズアップ現代で「どうなるハンコ社会ニッポン」というテーマでテレビ放送されるまでに至っています。

 

先日、脱ハンコの風評被害についてお客様に説明していると、お客様が「業界団体はどういっているの?何をしているの?」と問われ、はたと気づかされたのですが、ハンコ議連の議員の方や、山梨県知事さんらは、申し入れや行動をして頂いてはいますが、政治連盟としての動きだけで、業界団体の声明はなく、その政治的な側面行動のみな気がします。

それはそれで、意味ある事なのかも知れませんし、一部の方のご苦労はあるのかも知れませんが、業界団体全体の一致点での意志表示や行動にはなっていないように思います。

昨日のフェイスブックやブログなどSNSには、普段あまり物申さないような業界人も河野大臣のツイッターに対する意見を述べられていました。

 

印章は誰が作るのでしょうか?

作られた印章は、誰が使うのでしょうか?

そういうところを大切にして欲しいと心より願います。

 

「はんこやが作ったユニークなTシャツ!」の新しいタペストリーを店頭に設置しました。(写真)

当店も「心の冬支度」に懸命です。

posted: 2020年 11月 5日

印章は何が彫ってあるかが一番大事ということ

印章の本質的な意義は、

使用者の側からは、その印章に何が彫ってあるのかが大切であり

作製者の側からは、その印章に何を彫るかで決まります。

その共鳴点が、印面なのです。

 

その印面に、「押印廃止」と彫ってある印章を河野規制改革相にプレゼントしたのが、平井デジタル相でした。

「押印廃止」と彫刻したのは、印章業者か、印章業者が作った「ハンコ自動販売機」です。

印章業者にもいろいろおられると思いますが、それを販売したのは結論からすると印章業者なのです。

それを平井大臣が購入され、河野大臣にプレゼントして、ツイッターに掲載されたという流れになります。

ツイッターで、そういう事をアピールされるのは、大臣の品性の問題だと思います。

真面目な、モラルある業者からすると、私も含めさせて頂くと、「酷い!」ということになります。

もう一つの問題は、「押印廃止」と彫刻し、販売する土壌が印章業界にあるという事です。

様々な問題が、そこには関与していると思いますが、同型印の危険性のあるパソコンフォントでの製作現場と販売市場を放任してきた印章業界、流行キャラクターを素材にプリントするならいざ知らず、印面にパソコン機能を用いて彫刻してオリジナルという名を付けて販売している印章業界、技術継承者を作る現場を軽視して、ついには国から技能検定の廃止を検討されるようになった印章業界、モラルと規範無き印章業界、そこに落ち度はなかったのかも検証する必要があるのではないかということは、誰も言わないのでここに記したく感じました。

 

何を彫るのかを大切にして、今日も励みたいと思います。

 

一番、事実関係をきちんと述べて頂いているニュースをご紹介しておきます。

https://news.yahoo.co.jp/articles/3fa13179b408bf6a16a2f68c8bc5cf58bff4f4cf

その後の、平井大臣のコメントです。

https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4118349.html?fbclid=IwAR02DDa3ahGgT-_g4_y558SbP4p1uhGJkP7Bve7CkhQ2jYJPwajXWig_5as

 

posted: 2020年 11月 4日

大印展の大阪市長賞

ベッド組み立てて十一月の雨

【作者】皆吉 司

 

今年で68回目を迎えるはずでありました「大印展」は、コロナ禍により中止となりました。

私が生まれた昭和34年の第7回展より設けられたのが、大阪府知事賞とともに大阪市長賞でした。

今回の住民投票の結果により、消えずに継承できることとなりました。

様々な意見、政治的な意見があると思いますが、大印展の裏方としては、安堵の気持ちが先に立ちました。

この市長賞を目指して、どれだけの先生先輩方、また現役の出品者の皆様も日夜研鑽されているかと思うと、無くすべき賞ではないと私は思います。

その栄誉ある初回の賞に輝いたのが、講習会の教養課程時代の恩師、二階堂先生でありました。(写真の印影)

 

今ある物を壊して、新たなモノを創る時には、先人への感謝の想いがなければ成立しないと思います。

今、印章も河野大臣の脱ハンコ発言から、今ある行政に使用されてきた押印という、慣習も含めての在り方を壊すのですから、きちんとした理由と今までの在り方に感謝を持たなければ、成立しないと思います。

今までの在り方を無駄とか、不要としてしまうと、印章そのものの価値が崩れ去ります。

無駄なハンコ(押印)や不要なはんこは、何一つありません。

 

今年の大印展は、中止になりましたが、代替事業であります「令和印章修錬会」があります。

土曜日も、理事長をはじめ、大印技術委員会有志により、印譜作製の事務仕事を遅くまでいたしました。

各部門1位のみの発表は、大阪府印章業協同組合のホームページに明日、掲載いたします。

印譜は年内には作製を完了する予定です。

お手元に届くまで、もうしばらくお待ち下さい。

 

明日の文化の日は、通年なら大印展の受賞式ですが、明日は家の衣替えの為のお掃除と家内により計画されているようです。

 

posted: 2020年 11月 2日

不要なハンコや無駄なハンコはありません

今日は普通ゴミの日です。

店の前は、ゴミ置き場となっています。

同業者の方に、三田村さんのお店はゴミの前やから、目印になると気休め?を言って頂いたこともありますが、他の日も資源ゴミや容器ゴミ・・・とゴミのない日は日曜日と月曜日だけです。

写真には、既製の認印も写っていますが、これもいずれゴミになるのかなと、つい先日、業界内部の方が言われたことが頭に残りました。

脱ハンコの大きなうねりを作り出した河野大臣の発言ですが、最初は「ハンコを止めろ!」でした。

その後、行政手続きの押印を全て廃止すると言い換えられ、追加で実印などの重要印章は残ります・・・と。

無駄なハンコなど、なに一つもないというのが私の持論で、既製の認印が社会に対して果たしてきた役割は、大きなものがあると思います。

勿論、既製の認印の前提が大量生産であり、同型印である事の前提は否めませんが、安価でありどこでも手に入るという利便性を備えていることは、社会における印章の許容範囲を広げたともいえる商品です。

これを卒業印として社会に出る若い人の餞にすることには反対いたしますが、不要なハンコではないということです。

何度も言いますが、不要なハンコや無駄なハンコはありません。

それをどこに捺すかの指示に合理性を持たせるなら、それを整理すればよいのです。

既製の認印を不要とすることには、大いに反対です。

既製の認印には、それなりの役割があるのです。

それで、ご飯を食べている業者もおられるのです。

簡単にゴミにしないで下さい。

それよりも、既製の認印のような、同型印の危険性のある印章製作と販売の市場をどうにかすることの方が重要な課題だと私は思います。

 

しかし、国策である脱ハンコの流れは強くなっています。

全国の印章店は、大きな風評被害にさらされています。

そういうなかでも、実用印章の必要事項は多々あります。

ゴミとなるであろう既製の認印も、現在はまだ必要です。

消費者の皆様が、印章をお買い求めになる際の留意点は、本物を選ぶことです。

既製の認印ばかり、お買い求めになるよりも、本物の印章をお持ちになり、美しい気品を感じさせられる印影のデザイン力を自らの目でお探しになり、それを発見された喜びと共に、その印章を大切にされれば、それを忘れて既製の認印を出先で購入するという事は無くなります。

何故なら、自分のうつくしい印章を自慢し、美をシェアしたくなると思うからです。

在る程度のお値段がしますし、作製期間も長いかもしれませんが、きちんと具備すれば、認印、銀行印、実印、具備された以上にはいらない道具であります。

そして、大切に。

そして、次の世代に。

これ以上のゴミを次世代に残すことなく。

 

我々印章業者は、本物を消費者の皆様にご提供できるように、本物の技術を大切に、それを積極的に発信して、本物嗜好の時代を作り出していく事が求められていると強く思います。

本物は生き残る。

本物しか生き残れない。

そういう時代を作りましょう!

posted: 2020年 10月 30日

押印機会の減少は日本文化崩壊の一里塚

行先ちがふ弁当四つ秋日和

【作者】松永典子

 

 

「お疲れ様でした、まだまだ志が高い方がおられる様で頼もしいですね。新聞紙上でも盛んに印章不要論が掲載されてますが私が思うにちょっと待て、新聞は今話題の記事を掲載すれば売上になると不要論をもり立てるが新聞もいつ不要論が沸き起こるか分からないよ、と。印章や新聞に係わらず私の今持っている技術も取り上げられたらお仕舞いです、世の中は全てAIで完結する時代はいずれ来るでしょう、しかし汗水を流し技術を習得する事や今まで必要だったからこそ続いてきた文化を棄てるのが幸せなのでしょうか?私は人が汗を流さない、技術文化を大切にしない世の中は人にとって地獄であると思います。」

 

 

上記の文章は、ブログに頂いたコメントをそのままコピペしたものです。

それに対しての、私の返答は以下の通りです。

 

 

「コメント、有難うございます。

『令和印章修錬会』への出品や今年の大競技会の作品への審査に携わらせて頂き、思うのですが、やはり量は減っています。

「志の高い方」も一部ではおられますが、全体量の減少は、悲しいかな、そのクオリティも低下させています。

印章不要論を掲載する新聞も自分で自分の首を絞めているのかも知れませんが、印章業界の大半の意見は、私とは違い、行政の無駄な押印に関しては、無くすことも同意しています。

私は、「無駄な押印」などないと思いますし、これ以上押印の機会を無くしていくと、或いは、国の言う通りに重要な印章のみにすると、今ある制度では実印のみしか残りません。

その実印も、政府の在り方が変われば、今の脱ハンコが急に降って湧いたかのように出現したのと同様に、実印廃止が出るかもわかりません。

また実印のみなので、それを形骸化することは容易い事だと思います。

本当は、それ以前より業界の在り方を国がしっかりとレクチャーしており、「志の高い方」が少なくなったことを、技能検定受検者の減少で押さえて、廃止検討の方向に持ち込んだり、象牙を扱う店舗の状況を横のつながりで押さえ、その推移を把握していたことは、押印廃止への道をしっかりと歩んできたともいえると私は考えます。

新聞や雑誌の活字文化、印章の持つ力を封じ込める事は、日本文化崩壊の一里塚であると私は思います。」

 

 

国の言う「無駄な押印廃止」を許せば、婚姻、離婚届けや確定申告への押印も「無駄な押印」に入ってしまいます。

ドンドンと押印機会が減らされて行きます。

経験の減少をしていくということは、とても怖い未来に繋がります。

今、私もそうですが、ほとんどの人はパソコンを使い文章を書きます。

変換機能を使いますので、漢字を自分で書く経験が減らされています。

次には、書けなくなります。

ハンコは、どんなに立派な印章でも、100均の既製の認印でも使用しないと、ただの棒です。

捺印の機会が多いから、印章の重要性を感じるのです。

印章業者もはんこ職人もパソコンやスマホを使用して、或いはそれで仕事をして、その利便性を享受しています。

それに、慣らされてきて、利便性高きことや、合理的であることに、とても満足を感じています。

間がある事や、時間が掛かること、一見不合理なことには、腹立たしく感じる日常を過ごしています。

だから、今回の脱ハンコ騒動においても、印章業者は寛容に「不便な押印」はいらないと言われて、それを全体の意見のように言われることもありますが、私は脱ハンコ全てに反対です。

平成10年に押印廃止のガイドラインが施行され、その後多くの自治体で押印機会が奪われてきました。

これ以上押印機会を奪うと、印章が有名無実の状態に益々追い込まれて、冬の時代から氷河期に突入してしまうと予想致します。

 

みなさん、一般消費者のみなさん!

今は、まだ実印の効力高き世です。

印章のクオリティーである技術の低下が進む前に、良き手仕事のモラルある印章店にての実印作製をお勧めしておきます。

 

 

posted: 2020年 10月 27日

『令和印章修錬会』集計完了

やゝ寒く人に心を読まれたる

【作者】山内山彦

 

昨日、大印展の代替事業『令和印章修錬会』の作品集計と印譜作成の裏方仕事で5名と一匹が集まりました。

7名の審査員に作品である印影をお送りして、点数と寸評を書き込んでいただき、返送して頂いた物を集計しました。

お蔭様で、無事に順位が出ました。

今回は金・銀・銅という賞はなく、1位の発表のみとなりますが、印譜にご担当頂いた先生方の寸評を印影とともに掲載します。

その寸評を打ち込む作業と校正作業も昨日行いましたが、膨大な作業量のために、途中で時間切れとなりました。

また、今週末有志が集まることとなりました。

 

 

 

私が大印展に関わりだして、かなりの年数が経ちました。

若い頃は、作品作りと裏方作業。

技術講習会講師になったころは、後進の育成と裏方作業。

審査員になった今も審査と裏方仕事。

 

どちらか一方の人を羨ましく思ったり、ちゃぶ台をひっくり返したくなった心境の時も多々ありましたが、両方を続けて来れて良かったと今は思います。

どちらか一方であれば、怠け者の私は、とうに技術に関わっていなかったことだろうと思います。

 

作品に想いを込めて作製された力作の中には、自らの作品作りだけでなく、日々の仕事へのヒントが隠されていたり、凄い切れのある線質に刺激を受けたりと、モチベーションの継続に大きな励ましを頂いてきました。

とりわけ今回は、審査員の先生方の寸評付きですので、こういう視点で審査されているとか、こういうところに評価があり、誤字や規定以外の出品に対しての厳しい指摘など、勉強になる要素が満載されています。

出品者、とりわけ来年早々にあります技能グランプリに出場される方にとっては、貴重なヒント満載の印譜となると思います。

 

令和印章修錬会の1位の発表は、11月3日に大阪府印章業協同組合ホームページにて公開されますが、印譜は年内に出品者のみなさまにはお届けできるように今スタッフが奮闘中です。

posted: 2020年 10月 26日

もの作りとコロナ禍の社会

天高く梯子は空をせがむなり

【作者】仁藤さくら

 

昨夜のニュース23の中で、高級ブランド「コムデギャルソン」のデザイナー兼社長の川久保玲氏(78)が、もの作りについて次のように発言されていました。

「こういう状況下で少しでも、パワーの大切さを少し、皆さんにも分かって頂きたいと思いまして。もの作りのパワーを。あまり良くない状況で『何もできない』だとか、『少しお休みしよう』だとか、そういうことではなく、こういう時だからこそ何か新しいことに向かって進まなければいけないんじゃないかということで」

またコロナ禍の社会について、「制限だとかできないことが多くなると、その状態に慣れたり『それでいいかな』『しょうがない』と思うことは危険。かえってそこをチャンスとして強く前にいくパワーにしないと、この悪い状態を悪い悪いとしょげててもしょうがない」と述べられました。

 

78歳の川久保さんは、デザイナーでもあり、社長さんです。

一着の服が完成するのに、どれだけの工程があるのか、門外漢の私には知る由もありませんが、想像すると、デザインされたものを縫製して完成に至るのかなと考えます。

ファッション業界では、このデザイン力がとても問われ、それを世に出してセンスの良いデザインの服を着てみたいと、ファッションショーを見て、ご婦人方は思われるのだと思います。

 

印章の場合はどうでしょう?

嘗ての誤りより、手彫り、手仕上げ、機械彫りというコンセプトが優先して、手彫りなら高額というイメージしかなく、肝心かなめの印面デザインは、素人さんんには分からないと、後回しにするどころか、発信することを怠けてきたとしか言いようがありません。

ファッション業界より古い印章業界だと思います。

 

嘗て、ある職人さんが言われていました。

ゴム印のデザインやロゴマークを器用な職人さんは、わずかな価格やサービスと言って作製できる。

デザイン事務所に行けば、ロゴ作成代として高額な費用を要求される。

はんこ屋は、便利に重宝される。

 

だから、ダメなんだと思います。

唯一無二の印影が大切で、そこにファッションでいう、センスの良いとかデザイン性が表れます。

そう、上手い下手という技術力が一番現れるのです。

昔のお客さんは、それを上手に見分ける力と、文化を感じる鑑識眼という土壌を持っておられました。

捺印の機会がドンドンと奪われ、印章業界からの誤った視点(手彫り、手仕上げ、機械彫り)のみが市場で独り歩きして、印章の良否(技術のあるなし)を見えなくさせられてきました。

 

今更、ファッション業界の路線を業界を挙げて進むことは、技術力のない、職人の見えなくなった業界ではできるはずはありません。

(わざと、パフォーマンスで職人を見せる企画も一部では見えますが、職人が利用されているだけな気がします。)

父ちゃん母ちゃん経営の職人的経営をされているお店はクラフト的な発信に転換することは、大いに可能です。

かといって、印章以外のオーダーのグッズを色々扱うと、印章の専門性が薄くなります。

ましてや、オーダーグッズを自店での製作にしていると、それが仕事の中心になり、何屋さんかわからずに、発信力が分散していきます。

しかし、そこに気づいているお店もチラホラとで出てきています。

お店の独自性をインスタグラムなどで発信されているのを見ると、とても勉強になります。

 

このコロナ禍、「もうだめだ。」と諦めているとあきらめの神様が引っ付いてきます。

昨夜のニュースは、コムデギャルソンの川久保さんにパワーをもらいました。

有難うございます。

苦労して長年培ってきた本物の技術を、涙と共にどぶに捨てるような事だけはしたくありません。

頑張ります!

posted: 2020年 10月 21日

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