私と共に

南朝に仕へたる太刀飾りけり

【作者】民井とほる

 

昨夜のNHK「歴史探偵」のテーマは刀剣についてでした。

太平の世の刀は優美さを先行させたもので弱く刃こぼれしやすく実戦向きではありません。

南北朝や鎌倉時代の刀剣技術は廃れて、後の世に引き継がれませんでした。

江戸時代の刀鍛冶水心子正秀は、この失われた技を求め続けたが、やはり完全復活は果たせなかったようです。

コメンテーターの先生は、伝統文化や伝統技術というものは、継承する努力をしないと必ず廃れていくものですとおっしゃっていました。

自分の印章技術継承現場を見ていても、最近それを痛感しております。

写真の時計は、一年くらい前に修理に出したもので、部品が見つかり動くようになりましたと連絡を受けて、家内が引き取りに行ってくれたものです。

修理に出す時にも、この場でお話させて頂きましたが、この時計は私の印章技術習得修業、いわゆる鍛錬の場面を共にしてきた戦友です。

30数年前に、初めて就いた仕事をやめる時に、当時の職場の人達から頂いた記念品です。

京都から家内の実家に引っ越しをして、印章技術の修業に入り、私の机の上で時を刻み、やがては『印の畑』の印章講習会に参加、大阪の印章組合の技術講習会に高松から月一通い、阪神大震災の翌年、大阪に戻り起業、技能グランプリに6回挑戦、大競技会にて労働大臣賞を頂き、実店舗の二回の引っ越しや病気の再発、

現代の名工を頂き、黄綬褒章受章・・・その間、大印技術委員として大印展の裏方や技能検定の裏方、大印展審査員や技能検定首席検定員、大競技会審査員、技能グランプリ審査員、全印協技術委員などをさせて頂きました。

そういうのを、ずっと机の上から時を刻みながら私を見て来てくれました。

修理代に2万円かかりましたが、あと10年はまだまだ修業を共にしてくれることだろうと思います。

京都の職場の皆様、その節はお世話になり有難うございました。

この記念品である時計は、今も私と共に時を刻んでくれています。

 

この土曜日には東京で大競技会の審査があります。

土曜の朝が早いので、金曜日に息子の所に泊めてもらう事になりました。

日曜日も息子と少し遊んでから帰阪する予定です。

また、ご報告致します。

posted: 2022年 4月 21日

講師も鍛錬を怠るべからず

畝はしづかに集まり隆まり入学す

【作者】大槻紀奴夫

 

次の日曜日は技術講習会です。

コロナが高止まり、大阪などは増える傾向なようです。

そんな中、技術の勉強に集まるのですから、講師の私も勉強のし直しをしています。

昨夜、仕事終わりに少し資料をと思い、嘗ての業界誌『印の畑』の印章講習会を引っ張り出しました。

気が付けば小一時間も見入っていました。

嘗て、ここに出品していた時は、高松から大阪印章組合の技術講習会に通い、瀬戸大橋を渡るマリンライナーのなかで、印影に見入っていたのが一時間くらいのことでした。

当時の講師の先生方のご指摘を読んでいると、今にも通じる自分の癖や、今だからわかる内容のご指摘もあったように感じました。

当時誌上ライバルの方々の懐かしい名前も発見。

 

 

間のページに、当時の大阪技術講習会の講師の先生の見本印影が出てきました。

こういう具合に指導頂いていたんだと、講師としてのモチベーションが上がりました。

次の日曜日には、新人さんも来られるようですが、そちらは基本科の講師にお任せします。

ついつい口を出してしまうのが、悪い癖のようです。

畝はしづかに集まって来るようですね。

posted: 2022年 4月 14日

省かれた大切な行為

巻き込んで卒業証書はや古ぶ

【作者】福永耕二

 

昨日、「小学校卒業証書に他校の公印」というヤフーニュースを題材にお話を致しましたところ、多くのコメントをお寄せいただきました。

小見出しに「古代文字で4年間気づかず、漢字に詳しい児童が発見」というおかしな言い訳がしてありました。

古代文字という単語には、多くのご批判があったみたいで、その後訂正され篆書体のため・・・とされました。

しかし、その要因が篆書体の印章であることを匂わせたことには、書法展を擁する大きな新聞社の記事とはとても思えません。

現場の方からは、その要因として数年前からの証書のデジタル印刷化があるとご意見を頂きました。

数年前までは、生徒の名前も手書きで、公印は木の枠組を作って、その枠に合わせて丁寧に押していたそうです。

卒業証書の行方もそうですが、印章の価値の低落とともにあるような気がしてなりません。

印章は、印影だけが単独で成立しているものではなく、印章本体(印顆)の一部が印面であり、それを朱肉で「押捺す」という行為があるから価値を有し続ける事が出来るのです。

印影をデジタルにして「押捺す」という行為を省き、効率化することにより、間違いが生じることは勿論、人の意識から印章が遠ざかっていくということです。

コロナ禍で発生した「押印廃止問題」も認印を省くということは「押捺す」という行為、大切な行為が省かれる事となっていくことだろうと、この事より予想されることだと私は思います。

そういえば、技能検定の合格証書もデジタル印刷化となっていたような気がいたします。

posted: 2022年 3月 31日

印章技術に力を入れる

出し穴を離れずにゐる地虫かな

【作者】粟津松彩子

 

昨日、業界誌が届いた。

何か薄くなったなと感じ、数年前のものとページ数を比べると、20~30頁も減っている。

印章業界は、順風満帆な状態と言えないどころか、縮小の一途をたどっているように、その薄さが物語っている。

どうせ、面白い記事もないのではとページをめくっていると、昨年の総会で会長になられた若き業界団体の会長さんのインタビュー記事がめに飛び込んできた。

「印章技術に力をいれることが脱ハンコ対策、組織の継続につながる」という表題であります。

私が知る限りでは、30年ぶりくらいの技能士である会長であります。

大いに期待が持てるインタビューでありました。

ただ、全国的には技術の継承現場は疲弊しております。

大阪も組合と技能士会が分裂してから、組合に残された技能士は数少なく、技能や技能検定への意識が低く、ひいては技術が業界の土台であるという考え方がなくなりつつあります。

技術講習会への参加者も大阪の組合員が少なく、講師の先生も他県の人に頼っている状態です。

大阪の恥をいうようですが、これらが地方の現状です。

ウクライナへのロシアの進行を伝える報道を見ていると、海外の首相や外相は若い人が多く、女性の方も見受けられます。

業界は私も含めたおじいさんばかりで、若き会長さんに大いに期待しておりますので、技術継承現場にさらに目を向けた具体的な施策を求めてやみません。

 

posted: 2022年 3月 8日

技術継承現場も変革が必要

とりわくるときの香もこそ桜餅

【作者】久保田万太郎

 

昨日は、菩提寺への日曜朝散歩を復活させました。

技能検定やら胃痛と怠け心で、ほぼ一月をサボりました。

一月前は暗かった朝6時が、もう明るくなっています。

もう春は目の前ですね。

この日は、技術委員会と講師会の合同会議をzoomで致しました。

技術委員として、講習会の存亡にかかわると問題を提起して開催されました。

大阪印章組合の技術講習会は10月が新年度ですが、今年の10月には、基本科の生徒が1人になり、それに対して講師が3人になると予想されます。

研究科は人数はいるのですが、今まで研究科講師として奮闘していただいたI先生が体調を壊されました。

組織の在り様と、これからの在り方を色々と議論しました。

印章業界、とりわけ職人タイプのお店は、待ちの商売だと言われています。

お客様が来られるのを、待っている。

来たら、彫ってあげると言う姿勢の昭和な商売の方が多いように感じます。

技術者も教えを乞うなら教えてあげるという姿勢の講師の先生もおられますが、それでは講習会は自然消滅します。(勿論、生徒側からは教えを乞うと言う姿勢は大切ですが・・・)

巷の製作現場では、フォントを使用した印章製作をどのようにしたら、唯一無二のきちんとした印章に出来るのかと悩まれている方が多いのが現状なのに、それを講習しない、出来ないとは組合講習会の公益的役割とは?何なのだろう。

令和3年度後期の技能検定受検者数は目標の100名を超えたようですが、それを維持していくのに、前述のような昭和な姿勢の講習会では、元の木阿弥・・・平成30年度後期技能検定の時のように、今度はぐんと数が減ってしまうことと予想します。(大阪は数を増やしましたが、全国的には大幅に減らして、これが技能検定廃止の検討会にかかるようになった原因です)

議論の中から、講習費に見合うだけの魅力的な講習内容にしたいという声があがり、これからを期待できそうにも感じました。

魅力的な講習を宜しくお願いします。

そうして、基本科の講習生を増やしてください。

私は、大印技術委員をこの3月で降りまして、大印会館の鍵を返上致します。

もう講習会運営には携わりません。

そして、技術のライバルであり戦友でもある同僚講師I先生の足跡を継いで、研究科講師として奮闘していきます。

これはこれで、実は大変なのですが、おそらく組合幹部の人には推測さえできないことだろうと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

写真は、朝散歩途中にあるお寺の掲示板です。

もう一つは、朝食のデザートにと家内が持たせてくれた桜餅と草餅です。

posted: 2022年 3月 7日

弥生ワクワク頑張ろう!

三椏の花三三が九三三が九

【作者】稲畑汀子

 

先日、お亡くなりになられた稲畑汀子さんの春の句です。

何事も三三が九と計算通りにはいかないのが人生ですね。

これを書いていたら、嘗ての大印技術部の大先輩からお電話を頂きました。

お元気そうで何よりですが、昨年はコロナの為にお会いできませんでした。

今年は、会えたらいいなと思います。

コロナは、三三が九とした計算に割って入ってきます。

しかし、それでも工夫して生きていかないとね。

写真のチラシは、本日午後から産業創造館で実施される「大阪市魅力発信事業セミナー・成果展示発表会」です。

当店も参加しております。

家内が出かけてくれます。

さあ、私は印面に向かいます。

posted: 2022年 3月 2日

変わらないと残せない時代

三月は人の高さに歩み来る

【作者】榎本好宏

 

3月になりました。

お蔭様で、胃痛は何とか回復の方向に向かっています。

好きな酒を10日間ほどぬいたのは、ここ数年では珍しいことでした。

一昨日に飲んだ八勺の熱燗は、体が慣れないせいか苦く、美味しく感じませんでした。

昨日あたりから、美味いなぁ~と実感できたのは、体が元に戻り始めたのかな。

皆様には、ご心配をおかけしました。

3月は、胃痛になるほど実施段取りに苦しんだ技能検定の合格発表が11日にあります。(大阪は、職能ホームページに掲載されます)

また、13日は、(公社)全日本印章業協会主催の「第24回全国印章技術大競技会」の作品出品締め切り日(消印有効)です。

それなのに、大阪のコロナウイルス感染状況はまん延防止措置の延長の方向で動いています。

そうなると、また講習会が休講になるのでは・・・

講習生の作品作りの印稿を通信添削しておりますが、マンツーマンの添削指導は良いように感じる方もおられるかもしれませんが、横のつながりが断たれます。

指導者と生徒との往復で完結してしまうということです。

他の生徒(講習生)と比較しながら出品して、全国の技術水準のどの位置に自分がいるのかを見て、反省して次回に向かうなかで、技術が蓄積していきます。

それが一方通行だけになると、勉強の片手落ちになるということです。

大阪の技術講習会は、毎月第三日曜日です。

今月は20日で、まん延防止措置が延長されると、その中に入ってしまいます。

ここ2年間、ずっとこれです。

休講続きの講習会は魅力減です。

リモートも大いに取り入れる必要性に迫られているのではと思う昨今です。

講習生の目線に歩み寄る必要があるのではないかなと、今度の日曜日に対策会議・・・これが私の大印技術委員として最後の仕事となります。

posted: 2022年 3月 1日

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