素晴らしい作品とは?

何もなし机上大寒来てゐたり
【作者】斎藤梅子

景気が良くない印章業界ですが、それでも技術習得のために集う受講生は多く、大印会館5階の教室を満杯としていました。
物作りを通じて、人の暮らしに寄り添い、さらには人の心を動かす物を作ることが出来る人を職人と言います。
連続テレビ小説『スカーレット』のなかで、作品作りに行き詰った八郎さんは、ぽつりとつぶやきます。
「素晴らしい作品ってなんやろ・・・」
その答えを弟子の三津は、
「素晴らしい作品は、売れる作品です。」
と答えます。
おそらく正解なのでしょう。
いくら素晴らしい作品でも自分のモノであり、床の間に飾っていたのでは、職人として食べていけません。
だけれど、それは結果です。
売れる作品を目指したのでは、売れる作品にならないのです。
人の心を動かせる作品を職人は目指すべきだと思います。
物を作る事を通じて、人の心に触れる、そういう気持ちが職人に無ければ技は宙を巡るだけです。

写真は、ブログ友達の伊勢根付職人の梶浦明日香さんにご紹介いただいた小説です。
江戸の世で仕事に生きるおんな職人の生き方がちりばめられています。
伊勢根付のお話は、奥山景布子さんの「掌中ノ天」というお話にあります。
現在の職人が江戸期の職人から学ばなければならないのは、その技ばかりか、技の意味やそれを通して人とつながる心と心だと、読み進め乍ら考えています。

posted: 2020年 1月 20日