継承とは、人を育てることなり

断られたりお一人の鍋物は
【作者】岩下四十雀

先日、東京で長男と「お一人様焼肉」の店に行きました。
一人ずつ、網焼き用の席がしつらえて在り、タッチパネルで注文をします。
息子に聞くと、「お一人様しゃぶしゃぶ」の店もあるとか・・・。

今日の連続テレビ小説『スカーレット』のお話から・・・毎度、まだ見ていない人、ごめんなさい。
深野心仙(フカ先生)は、子供の頃から、絵が好きで画家になり、若い頃は展覧会に入賞したりした偉い先生でした。
ところが戦争が始まり、従軍画家となり人を殺している苦渋の顔を描かないといけないようになりました。
戦争が終わり、もう二度と絵など描きたくないと思っていた時に、絵付け火鉢に出会いました。
そういう先生だから、教えを乞いたい、学びたいと喜美子は思いました。
おかあちゃんが探してきてくれた、一週間に一度、人が入れ替わり教えてくれる「絵付け」作業という話を聞いて、何か違う、教えを乞うとはそういうことではないと気づいた喜美子でした。

世の中が変わって行っても変わらないもの、変えてはいけない考え方があります。
印章もその一つですし、その継承もそうです。
継承とは、人を育てる事
・・・自分にないものを持っている人に頼んで教えを乞う事
「技術を継承しよう!」とか「印章文化を伝えよう!」というスローガンや目標でなく、具体的に人対人のこと・・・大切なのは、継承現場。
パソコンやインターネットで教えられることではありません。
継承現場の質量を高めていくこと。
その一過程に技能検定や競技会、大印展、グランプリがあります。

今日は、今シーズン一番の寒さとか
今晩は、鍋にしてもらえますかというのは、奥さんへの業務連絡。

posted: 2019年 11月 15日

技を受け継ぐ者の使命とは

団栗の己が落葉に埋れけり
【作者】渡辺水巴

都会での生活の中では、なかなか団栗(どんぐり)を見かけません。
しかし、子供の頃の団栗を拾って遊んだ記憶は残っています。
この句の捉え方は様々だろうが、団栗が落ち葉の海のなかでジタバタと溺れているような滑稽な姿が、私の脳裏に浮かんできます。
しかし考えてみると、その埋もれた姿は滑稽でも、それにより私のような悪ガキの目から隠してくれます。
そして落ち葉が土にかえり、栄養分となり、団栗を育み櫟(くぬぎ)の木に成長させてくれます。
この自然界の仕組みから我々は学ばせて頂いているはずなのです。
それが、継承ということです。
一見、溺れていて滑稽な姿であっても、それは後継という次の世代を育成するには必要な足掻きであります。
足掻きもせずに、腕を組んで見下ろし、継承が果たせずに、消滅崩壊させてしまえば、ほら見たことかと高笑いしても、自分の足元は崩れ去り、もう誰もいない状態になっていることだと推察いたします。
勿論、足掻いているだけでは継承は出来ません。
継承とは、人を育てる事に他なりません。
技を受け継ぐとは、そういうことではないだろうか。
技を受け継いだ者の使命とは、何だろうと考えさせられる今日この頃です。

posted: 2019年 11月 14日

徒弟制度と技能検定

小春日やものみな午後の位置にあり
【作者】清水青風

今日の連続テレビ小説『スカーレット』のお話。
まだ見ていない人・・・すみません。
喜美子が時間が経つのも忘れて一生懸命にした絵付けの作業を師匠は勿論、弟子たちも誰も仕事として認識していなかった。
「また遊びにおいでな・・・」と言われた喜美子。
仕事として絵付けをした気持ちを伝えるシーン
仕事としてできるようになったのは、弟子2番は、3年かかった。
弟子1番は、住み込みで教えて頂いたので1年。
自分の家庭の事情で朝のみ絵付けの仕事をやりたいとした考えの甘さを、喜美子は思い知ることになります。

この絵付けの仕事もそうですが、陶磁器を製造する技能検定(国家検定)があり、先日お知らせしましたように、廃止を検討され、今年度中に結論を出されるという状況です。(印章の技能検定とよく似た状況であります)
『スカーレット』のなかでは、1年や3年で仕事としてできるようになったとあるのは、少し時代考証が出来ていないと思います。
当時の徒弟制度は、修業期間は少なく見積もっても5年、どうかするとお礼奉公2年~3年という状況であったと思います。
それが、機械化や就業意識の変化とともに少しずつ変わり、平成に入る頃は、修業期間3年、お礼奉公1年、となりました。
平成が終わるころには、修業期間を2年に短縮するために親方師匠筋が工夫を重ねるという状況から徒弟制度は崩壊の道をたどりました。
技能検定の受検資格も平成16年度から実務経験年数が大幅に緩和されました。
1級は、12年から7年に
2級は、3年から2年に・・・。

当時の職人仕事に喜美子がいくら学ぶ姿勢があっても、趣味でしていると思われても仕方がないような時代背景がありました。
今、仕事を好き嫌いのみで仕分ける考え方がります。
好きなことは重要だと思います。
しかし、とことん好きか?というと疑問があるような人もいます。
好きと自己満足も違うように感じます。
時代はドンドンと変わりますが、きちんとした位置にあるというのも大切かなと思います。
きちんとした位置にあり、次に伝える
次に伝えるということは、意識しないと出来ない時代
それも時代です。
技能検定も維持できない業界に未来などありえないのです。
業界や技能という思考から脱して、自らの技術を違う方向から光を当てるというのはあるのかもしれませんが・・・。
それも頭の片隅におき乍ら、取りあえずは、技能検定存続のために頑張ります!

posted: 2019年 11月 12日

基本をきちんと勉強しなさい

連続テレビ小説『スカーレット』のお話は、これから先の展開となる信楽焼という陶芸を作る女流作家に主人公の喜美子が成長していくことが柱となっています。
そう、モノづくりがテーマだと思います。
脚本家の水橋文美江さんは、あの名作『夏子の酒』を書いた方です。
その考え方、モノづくりの根本が、今日のお話のなかで、少し見えました。
やはり、こういう作り方をしていくのだと少し安心したシーンがありました。
普通の人なら気に留めないシーンなので、まだ見ていない人もお許しいただけると思います。

喜美子が入学予定の学校で、特別講師として招かれる世界的な芸術家・ジョージ富士川(西川貴教)のサイン会でのお話。
喜美子がサインをしてもらい、美術の勉強をすると知ったジョージ富士川は、「基本をきちんと勉強しなさい。基本は土台だから、土台のないものには自由も生まれない。」
パチパチパチ・・・同感です。

今や印章業界内外を問わず、印章の価値がどんどん低下していき、印章を必要とした全ての場面において、印章不要論が台頭しだしました。
少しずつ、印章が追いやられています。
土台無き印章が世を闊歩し、それを商機ととらえた輩が、それを利用して懐を温め、利用できなくなるとポイ捨てでも構わない、それより次の商機を探し求めています。
その末路が現在です。
印章の土台は技術です。
面白い顔をした印章に世を闊歩させたのは、誰でしょう?
印章が、モノづくりから切り離されて久しいですが、そのモノづくりから印章の存在意義を問われ、猛省を迫られています。
さあ!どうしますか。

これからの『スカーレット』の展開に期待しながら、業界人は考え直さないといけませんね。

posted: 2019年 11月 1日

仕事の依拠するものとは?

秋澄むや山を見回す人の眼も
【作者】大串 章

昨日、店が入っているマンションの水道メーターの取替工事がありました。
以前、下水管の清掃業者が作業をされた時、トイレの水の流れが急に悪くなりました。
その業者に確認の認印を捺すときに、その状態を伝えると、後で確認に来ますから確認印だけくださいと、その後音沙汰なし・・・。
管理人さんを通じて管理会社に言うとすぐに飛んできましたが、写真をとりその後検査に出しますといい、そのまま返事なし・・・
店の家主さんに言ってトイレの排水管を取り替えて貰いましたが、それでもダメ。
トイレがきちんと流れずに、毎日嫌な思いをしていました。

ところが、水道メーターの取替工事の若いお兄ちゃんが、作業後に声をかけてくれました。
「今まで、水圧低くなかったですか?あまり流れなかったのと違いますか?」
「錆びが水道管についていたので取っておきました。」
確認すると、トイレが勢いよくながれました。
・・・とても幸せな気分になり、取替工事のお兄ちゃんが神様のように思えました。
「ありがとう!めちゃくちゃ嬉しいわ。」

下水清掃作業員、水道屋さん、管理人、管理会社、不動産屋さん、家主さん・・・総動員でダメだったことが、自分の仕事に少しのプラスアルファーで錆びを取ってくれた若いお兄ちゃんの仕事に対する丁寧さ、ひた向きさによって一挙に解決しました。

自分の仕事が何によって成り立っているかを考え直した出来事でした。
自分の仕事にひた向きにならない、与えられた仕事のみをこなすと言う姿勢、それどころか、同僚をいじめたりする仕事への姿勢・・・私の周りでは、そういう声をよく聴きます。

私の仕事は、印章を彫刻してお客様に販売するという仕事です。
一番大切なことは、きちんとした仕事・・・きちんとした印章を彫刻して、きちんとお客様にお渡しする。
当たり前の様で、とても難しいことです。
その上で、印章を販売する仕事というのは、何によって成り立っているのでしょうか。
お客様が、印章に対して価値を認めているからです。
プラスαとしては、私が彫刻するということに価値を感じて頂けるからだと思います。
その印章の価値は社会的なモノです。
社会から認められてきたという実績の元に成り立ち、それは先輩方がつくってこられたことです。
技能検定も我が業界にとって、大きな軌跡を形成してきました。
その意義を業界全体で再確認が求められているようです。
まずは、令和3年度後期技能検定(令和4年初旬実施)を全ての都道府県で実施し、全ての印章業者が受検しましょう。
有資格者は、継承現場での指導に当たり、また技能検定の運営と実施に協力致しましょう。
当面あがきましょう。
あがきに協力もせずに、文句を言うのはまず論外です。
自分たちの商売がそれにより成り立っているのだから・・・。

posted: 2019年 10月 30日

斬られ役

斬られ役また出て秋を惜しみけり
【作者】泉田秋硯

今日は少し寂し気な秋雨の大阪でした。
村芝居の端役は、役者がいないので、何でもこなさなければならない。
斬られ役は、斬られると用無しになるので、次のシーンではまた別の役をしている。
それを可愛そうととるのか、いろんな役が出来て面白そうととるのかで、人は違ってくるように思います。
私にとっての秋の一大イベントは、毎年「大印展」です。
いろんな役をこなしています。
技術委員と審査員・・・
今年は降ろさせて頂きましたが、昨年までは大印理事や近連理事としての役もありました。
嘗ては、出品者としての役もしていました。
出品者としては、大印展においては主役を張ったことがありません。
大概、斬られ役が多かったです。(笑)
今も、何かと斬られ役・・・
こないだも、別の所で道を歩いていたらズバっと!斬られました。(笑)
11月3日の大印展も間近です。
これが終わると、気分を変えての冬支度です。
大印展は、秋と冬を斬る役割があるのかな?

posted: 2019年 10月 29日

職人の魂と使用者の魂

秋霖や右利き社会に諾へり
【作者】大塚千光史

おはようございます。
秋霖という感じの雨の大阪です。

職人の仕事というのは、淡々としたもので、且つ純粋に技術のみというところもあると思います。
職人自身は、ある意味、そう在るべきなのかも知れません。
使用者は、どうでしょうか?
職人の仕事への姿勢を汲み取ってくださる方も多くいると私は実感しております。
勿論、職人のその仕事によりつくられたモノを購入し使用するだけなのですが、職人は、その使用期間にも思いを寄せなければならないと思います。
印章であれば、きちんと一生使用出来うるだけのモノをご提供する必要があります。
途中、破損しても修理してはいけないのが、印章の運命です。

修理することが求められる商品もあります。
それは、アフターケアも考えて作製されています。
家などは、その代表格ですね。
使用途中で思いが込められます。
長きにわたり使用する印章などは、尚更です。
使用頻度は少なくなりましたが、それでも人生の重要な場面でご使用頂きます。
思いは、積もり込められていきます。
最初に、お作りになられたときの思いと
それを受けて、職人が込める思い(魂)と
使用していく中で、積もっていく思い(魂)が混在して
佳き印章となり、完成形に近づいて行く・・・
そういうスタンスが職人には必要だと私は思います。

ネットショップの「お客様の声」を更新しました。
ご一読お願い致します。
http://mitamura-inshouten.com/wp/voice

posted: 2019年 10月 25日

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