無意識は必要性の希薄を招く

空箱の中の青空神の留守

【作者】高橋修宏

今朝は、投票に行き仕事場に来ています。

ネットを見ていると、女性史研究家のもろさわさん(96歳)の初投票の経験談を目にしました。

「1946年4月10日。当時21歳だった、もろさわようこさんは家から村役場の投票所まで、約20分の道のりを歩いて行った。

村のはずれから1時間以上、自転車を漕いで駆けつけた人もいれば、大切にしまっていたもち米と小豆で赤飯を炊いて、お祝いした人もいたらしい。

この日は日本の歴史で初めて、参政権を得た女性たちが選挙で一票を投じた日。今から75年前の出来事だ。」

その時の一票の重みは、投票が18歳からになった今、それへの意識が軽くなっているような気がしてなりません。

 

「印章彫刻」は、先人の努力により昭和45年度から技能検定の職種に加えられました。

技能検定の実施は印章組合ではなく、厚生労働大臣が行う国家検定であります。

国から委任された都道府県は傘下の職業能力開発協会に行わせる体制をとり、その職能と協力協定を印章組合が結び実技試験を検定員が執行するのです。

その為には、印章組合の先輩方が多大なご苦労をされてきたことであると、技能検定の検定員兼裏方を長年させて来て頂いた私は想像できますが、その認識が現在業界にないというより、組合幹部の方々に無いのはとても悲しいことで、またそれだから業界全体に技能検定の必要性が伝わらないし、何ら伝える努力をしてこなかったという事が言えます。

 

意識しないと、その必要性は希薄となります。

 

昨日の「不要なハンコ、無駄なハンコはありません」のリブログ記事にコメントを頂きましたので、ご紹介しておきます。

 

「私の息子が通う中学校でも毎朝提出する検温表に保護者が認印を押印していたものが不要になりました、理由は誰でも押せるから意味が無いということです。日露戦争でバルチック艦隊を最初に発見した沖縄の漁師の方が署名に押印する印章を持っていなかったので連合艦隊に対する通報が数日遅れるということが、またその事実で確認された印章の信用性の重大さを示す事案が実際にあったそうですが日本文化を代表する印章文化の現在に於ける権威失墜の原因を考え他の職種、業種も襟を正さなければ同じ轍を踏むことは明らかであると思います。印章業におかれましては矢張パートの方でも簡単に印章が作れる、売れる、技術者を軽ろんじるでは我々大衆の共感が戻らないのではと一印章ファンとして心配になります。」

 

以下、私からの返信です。

 

「コメント有難うございます。

政治はいろんなモノを付随させます。

そこへの働きかけは、芯を突く物でなければ、付随物にやられてしまいます。

押印と言う印章制度を取り入れたのは官印からです。

その官が民に忖度して押印を無くすという事はあり得なく、そこには付随物があるから押印を排除なさるのだと思います。

我々印章を扱う業界人は、そこに偏りの依拠を示すのではなく、向かい合うのは「大衆への共感」であると私も考えます。

使用者に向き合わないと、その商材のクオリティは低下していきます。

技術を神棚に祭り上げ、市場では規範無き玩具印章が乱売されれば、ますます「大衆への共感」は無くなり、それと同時に印章の価値を低下させていく事となります。

それが目下の印章業界であると言って過言ではありません。

私は、そこをもうどうにかする気はなくなりました。

日本文化や工藝としての視点から、印章を支持して頂ける人に向けて、その中の印章を模索して行きたいと強く考えています。

これからが勉強だと思い、飛翔を望む人達と多く関わり、印章を本当の意味で守っていきたいと思っています。

既存の思考や組織からの訣別から新たな一歩を踏み出します。」

posted: 2021年 10月 31日