当たり前の話ですが、印章はアナログです

盂蘭盆会 遠きゆかりと ふし拝む

【作者】高浜虚子(たかはま きょし)

 

明日よりお盆休みのところも多いと思います。

当店もそうさせて頂きます。

コロナで今までに等閑にしてきたことが露呈してきて、10日の五十日を挟んでも9日間のお休みをされているところが多いように思います。

等閑にしてきたこととは、印章はアナログであるということです。

大量消費大量生産の時代に印章はアナログであるという事を忘れて、その生産方法をデジタルに頼ってきました。

その当時は、これに規範を与えるなら、それも時代の趨勢であると思っていました。

技術講習会にPC型彫刻機を持ち込み、その操作方法を教授せよとの理事会よりの圧力もありました。

しかしながら、それに呼応する講習生はいなく、上手くそれをかわしつつ、印稿指導という形にして上を誤魔化してきました。

技術講習会という継承現場にさえ、デジタルでの生産方式が入りつつありました。

市場では、どんどんとオモチャのようなハンコが乱売され、印章の価値を低下させることに一役買ったのが、デジタルでの生産方式です。分速で販売されるネット市場において、分速で生産されるハンコは、職人が手間暇かけて作製するアナログ式印章とは、大きな隔たりを世間に露呈していきました。

しかし、業界はそこに線引きをせずに、印章を販売するという一点で公益とすると、それらを許容して仲間に引き入れました。

デジタルによる大量生産型の合理的経営姿勢が評価され、アナログ型の製作現場は無視され、印章技術の継承者は質量ともに低下の一途を辿っています。

そこに新型コロナがやってきたのです。

 

東日本大震災での津波被害に対して河川をコンクリートで固める護岸工事に反対したのは、この春亡くなられたC.W.ニコルさんでした。

森林を伐採し続けた国の在り方に根本的にモノを言ったのは、日本に帰化した彼でありました。

根本的なところに目を向けないと、このwithコロナ社会は乗り越えられないと私も思います。

 

嘘に塗り固められた商業主義的なる在り方が印章の価値を低下させてきたことは、事実です。

はっきりとデジタル式生産方法と訣別する時は、今であります。

印章はアナログだから意味を持つのです。

目先を変えた、デジタルで加工されたキャラクター入りハンコを文化としてほめたたえる業界には、もう未来などあり得ないと思います。

あまりにもデジタルによる生産方法に慣れてしまった業界人からすると、今更何をいっているのかと失笑されることと思いますが、いままで目をつむり失笑してきたことが本来大切な印章の本義であったということを忘れないで欲しいと思います。

https://www.tfm.co.jp/forest/index.php?itemid=164907

 

posted: 2020年 8月 12日