三文判の捉え方の変遷

物の音散りあつまりて十月へ

【作者】黒川路子

 

明日から十月ですね。

さて三文判とは、どのような印章の事を言うのでしょう。

質の悪い安物という意味の二束三文という言葉があります。

三文だと消費税を含んで考えて、今の100円くらいの価値です。

100円ショップで販売されている印章を三文判というのでしょうか?

100円ショップで販売されている印章は、既製の仕入印です。

はんこ屋さんの看板にもなっているクルクル回るケースにはめ込んである印章です。

印章はどのような物でも、三文判でも一度捺印した印影は、「首と掛け替え」とか「首と吊り替え」と言われるほどの効力をもつものです。

河野大臣の「三文判を押す行為は、個人の認証にもならないからいらないと思う」という発言は、そういう意味では間違いでありますが、その真意を想像してみると、おそらく100円ショップで販売されているような大量生産の印章という事を否定したかったのだと想像します。

三文判を認印と置き換えると、河野大臣の発言には問題が大いにある側面もあるのですが、この文章のなかではそれは置いておきます。

大量生産を三文判と規定すると、同型印がたくさんあり、誰が押しても同じであるということに繋がります。

田中さんの三文判は、他の100円ショップで購入しても同じ印影の田中さんになります。

そう、それでは個人認証の意味が果たせないのです。

100円ショップで販売されている印章を悪く言いましたが、同型印の危険性があるという事では、パソコンで作製された印章や、パソコンフォントの印章は同型印の危険性があるということでは、実印の体をなして姓名を水牛材やチタンという三文判らしからぬ素材に彫刻してあっても、それは今の意味での三文判だという事です。

また、河野行政改革担当相は、公益社団法人全日本印章業協会の会長らと28日に面会したことに触れ、「はんこには文化的な側面もあるので、はんこ文化を振興させる手伝いは積極的にやりたい」と述べた。

はんこ文化の振興のためには、それをきちんと彫刻する職人の養成が不可欠です。

オモチャのような印章普及を止めて、印章の価値を取り戻すために、ご尽力賜ればと切にお願い申し上げます。

 

 

posted: 2020年 9月 30日