第19章 印章学による印章・・・その7
(7)具備すべき印章
<銀行印>
銀行取引に主として使用する実印に準ずる印章です。
重要物件にても実印を必要としない場合に用います。
特に銀行等の預貯金、小切手等資産印として金銭の出入りを司る印章ですので、その善悪は家運の盛衰にも関係するところが多いと言われています。
寸法は実印と同様の五分丸(約15ミリ丸)・・・姓名入りの場合
ないしは、一回り小さい四分五厘(約13.5ミリ丸)・・・姓のみの場合
が良いかと思われます。
上記の通り、刻字は姓と一文字姓の場合は印字法を使用する(役所と違い、ダメな金融機関はありません)。
姓名によっては姓名合わせて彫るのもかまいません。
これも刻者とよく相談が肝要です。
銀行印は実印を混用せず必ず区分すべきであります。
銀行等への用向きは代理人をしてなされることもありますので、このような場合実印を紛失、悪用の恐れもあり、銀行専用印を使用するのが万策です。
その他印鑑証明の不要な重要文書一切に使用される。
●実印は銀行印と離して別個に奥深く秘蔵すること。
●銀行印は法人と個人を区分し、兼用は不可。
●銀行印と認印は、その人の地位や役職に応じて、その副印を何顆でも備えてよい。(同型印は不可)
●小切手、手形に使用する銀行印は象牙材が特に好適である。
<認印>
俗に裏印とも称せられる名称の起こりは「認めた」「承認した」という意味で押したことに由来しています。
「認」という字は「言」(ことば)に「忍」(しのぶ)を組み合わせた諧声文字です。
現今の法律では実印と認印の間に何等の差別も設けられていません。
これは認印であるから、仮に承認したまでだという遁辞は認められていません。
効力は何れも同一でありますが、例えば実質上同等であっても、衣類にも正装と作業着の区別があるように、その使途を区分して備えることが至当です。
また実際上において、このことで不測の災難を未然に防いでいる場合が多いことも事実であります。
認印を実印にすることも出来ますが、その印章の取り扱いにおいても信念においても粗漏を来すことは当然と言えます。
対人、対金銭の保証印を安易に只漫然と押して後日の悔いを残している人々には、軽重二重の印章を用意していない人が実に多いということです。
その印面の大きさは三分五厘(約10.5ミリ)丸が主流でありました。
しかしながら、役所での押印廃止や、インクの浸透する方式のスタンプ(巷ではメーカー名のシャチハタ式が通り名です)の大量普及で、認印の捺印回数が意識的に激減させられています。
そのために認印の役割が少し変容してきていると感じます。
これは試案としてのご提案ですが、肩の張った認印・・・少し重要な箇所に朱肉を使い捺印する・・・その折には三分五厘という10.5ミリ丸は既製の認印10ミリ丸とどんぐりの背比べとなります。
そこで、三分五厘以外に四分(約12ミリ)丸の認印をお持ちいただくことが良いかと思いますし、これが重宝する時代になってきていることを実感します。
言うまでもなくそれより大きい認印は、押印欄からはみ出し見苦しさとその人の人格の虚栄を垣間見させることがあり、避けるべきであります。
尚認印の使用が頻繁であれば、その材は象牙にされることが得策です。
そして実印・銀行印・認印のなかで一番小さい面積の印面となりますので、文字の太いばかりの印相書体では朱肉が文字間に詰まり見苦しくなりますので避けられる事が好ましいのは当たり前ですが、分かりやすい文字の楷書や古印体は、上記肩の張った認印としてその気品には欠けます。
やはり印篆の増減法と那依法を利用した小篆の流麗さが対人の美意識を捉えることでしょう。
posted: 2014年 7月 10日