第19章 印章学による印章・・・その8

(8)字頭(じがしら)

前印とも称し、捺印時に印章の前後をわかりやすくする為に、印顆(本体サイド)の中程に附したものです。

指当、象眼、丹入、鋲付の4種類があります。(関西では、象眼や丹入は使用しないので、写真にはありません。)

この字頭は殆どの印章についているものですが、この字頭を頼りに指でさぐって押捺するので、却って乱雑な印影になることがあります。

「さぐり」という俗称はここからきています。

字頭がない方が、押捺の際に印面を確認しなければならないし、よく注意するので、印肉のむら、塵埃の付着などもすぐわかり、押し損じが生じず、位置も正確に立派な捺印ができるとともに、その物件に対して冷静な態度で処理することになります。

捺印の慣習も備わり一挙両得であります。

字頭が無ければ不便であるという人がいます。

これは印章の捺印を軽んじている人であります。

印章を慌てて捺印して信用を失うのみならず、証印事故で身を亡ぼすことにも発展しかねない。

関西では昔から高級印材には字頭は一切ついていなかった。

今は既製の認印をはじめ大衆的な印材には全てつけられています。

しかし字頭を凶とすることは、誤妄の説です。

字頭を指して、印材を傷つけることは人体を傷つけることと同じであるとする説は行き過ぎた迷説で、前であるということで附したので、決して傷ではありません。

字頭は個人正印の外は法人印、その他には附しても差し支えがありません。

個人印でも副印には附してもかまいません。

只それには指当と鋲打に止めるべきで、象眼丹入は避けた方が良い。

金銀プラチナ等の挿入は印章の品位を損なうものであり、浪費と増長心を意味するものとされています。

字頭のない印は最初は確かに押捺が難しいが、すぐに正確に美しく捺印できるようになるものであります。

いつまでも不正確な印影しか得られない人は、その人の粗野と不信の反映であります。

 

posted: 2014年 7月 10日