仕事の依拠するものとは?

秋澄むや山を見回す人の眼も
【作者】大串 章

昨日、店が入っているマンションの水道メーターの取替工事がありました。
以前、下水管の清掃業者が作業をされた時、トイレの水の流れが急に悪くなりました。
その業者に確認の認印を捺すときに、その状態を伝えると、後で確認に来ますから確認印だけくださいと、その後音沙汰なし・・・。
管理人さんを通じて管理会社に言うとすぐに飛んできましたが、写真をとりその後検査に出しますといい、そのまま返事なし・・・
店の家主さんに言ってトイレの排水管を取り替えて貰いましたが、それでもダメ。
トイレがきちんと流れずに、毎日嫌な思いをしていました。

ところが、水道メーターの取替工事の若いお兄ちゃんが、作業後に声をかけてくれました。
「今まで、水圧低くなかったですか?あまり流れなかったのと違いますか?」
「錆びが水道管についていたので取っておきました。」
確認すると、トイレが勢いよくながれました。
・・・とても幸せな気分になり、取替工事のお兄ちゃんが神様のように思えました。
「ありがとう!めちゃくちゃ嬉しいわ。」

下水清掃作業員、水道屋さん、管理人、管理会社、不動産屋さん、家主さん・・・総動員でダメだったことが、自分の仕事に少しのプラスアルファーで錆びを取ってくれた若いお兄ちゃんの仕事に対する丁寧さ、ひた向きさによって一挙に解決しました。

自分の仕事が何によって成り立っているかを考え直した出来事でした。
自分の仕事にひた向きにならない、与えられた仕事のみをこなすと言う姿勢、それどころか、同僚をいじめたりする仕事への姿勢・・・私の周りでは、そういう声をよく聴きます。

私の仕事は、印章を彫刻してお客様に販売するという仕事です。
一番大切なことは、きちんとした仕事・・・きちんとした印章を彫刻して、きちんとお客様にお渡しする。
当たり前の様で、とても難しいことです。
その上で、印章を販売する仕事というのは、何によって成り立っているのでしょうか。
お客様が、印章に対して価値を認めているからです。
プラスαとしては、私が彫刻するということに価値を感じて頂けるからだと思います。
その印章の価値は社会的なモノです。
社会から認められてきたという実績の元に成り立ち、それは先輩方がつくってこられたことです。
技能検定も我が業界にとって、大きな軌跡を形成してきました。
その意義を業界全体で再確認が求められているようです。
まずは、令和3年度後期技能検定(令和4年初旬実施)を全ての都道府県で実施し、全ての印章業者が受検しましょう。
有資格者は、継承現場での指導に当たり、また技能検定の運営と実施に協力致しましょう。
当面あがきましょう。
あがきに協力もせずに、文句を言うのはまず論外です。
自分たちの商売がそれにより成り立っているのだから・・・。

posted: 2019年 10月 30日