技を受け継ぐ者の使命とは

団栗の己が落葉に埋れけり
【作者】渡辺水巴

都会での生活の中では、なかなか団栗(どんぐり)を見かけません。
しかし、子供の頃の団栗を拾って遊んだ記憶は残っています。
この句の捉え方は様々だろうが、団栗が落ち葉の海のなかでジタバタと溺れているような滑稽な姿が、私の脳裏に浮かんできます。
しかし考えてみると、その埋もれた姿は滑稽でも、それにより私のような悪ガキの目から隠してくれます。
そして落ち葉が土にかえり、栄養分となり、団栗を育み櫟(くぬぎ)の木に成長させてくれます。
この自然界の仕組みから我々は学ばせて頂いているはずなのです。
それが、継承ということです。
一見、溺れていて滑稽な姿であっても、それは後継という次の世代を育成するには必要な足掻きであります。
足掻きもせずに、腕を組んで見下ろし、継承が果たせずに、消滅崩壊させてしまえば、ほら見たことかと高笑いしても、自分の足元は崩れ去り、もう誰もいない状態になっていることだと推察いたします。
勿論、足掻いているだけでは継承は出来ません。
継承とは、人を育てる事に他なりません。
技を受け継ぐとは、そういうことではないだろうか。
技を受け継いだ者の使命とは、何だろうと考えさせられる今日この頃です。

posted: 2019年 11月 14日