印章彫刻技能士は人の尊厳と権利を守る仕事

「気象予報士は人の命を守る仕事」

 

これは、朝ドラ『おかえりモネ』で、モネの持っている気象予報士資格の受検参考書に書いて合った言葉です。

モネは考えます。

「資格ってなんだろう?」

医師の菅波は「医師も気象予報士も国家資格です。人の財産や生命にかかわるもので、何かミスをおかせば、目の前の人の命を奪ってしまうくらいの重い仕事をする資格があるかどうかを問うのが、気象予報士の資格を目指すことだろう。」と応えます。

「印章彫刻技能士の資格ってなんだろう?」

と私は考えます。

国家検定である技能検定で合格した人が技能士と名のることができますというのが厚労省の規定で、技能士の資格についての規定はありません。

ましてや、印章彫刻技能士の明確な国としての規定はありません。

そこで、『おかえりモネ』に準えて、『印章憲章』から言葉を借りて、印章彫刻技能士とはということを考えてみました。

天気の予報を間違えると海で働く漁師さんやモネの職場の山で働く人達の命を奪いかねないという事は安易に想像できます。

また、医者も誤診をしたり、手術で失敗すると命が無くなることに直結します。

印章彫刻技能士が誤字を彫ろうと、失敗をして文字を傷つけたり、輪郭を欠損しても、或いはパソコンフォントの既製文字を使い同型印を彫刻しても、人の命が無くなるという事はありません。

嘗ての印章は、「首と掛けがへ」とまで言われ、他人の保証人になって捺印したことにより財産をとられ、首をつって死ななければならなかったというお話もあり、親が子に簡単に捺印しないようにと教え伝えたものです。

『印章憲章』の印章についての規定に次のようなものがあります。

「印章は個人の権利義務の証左となり、憲法で保障される人間の尊厳の証となるものである。」

そこから派生して考えると・・・

「印章彫刻技能士は、人の尊厳や権利を守る印章を作る仕事である」という事だろうと思います。

昨日は、3か月ぶりの技術講習会でした。

一級技能士を目指して、懸命に机に向かう講習生とそれを指導する講師の先生の姿が久しぶりに大印会館にありました。

講師の先生から「対面講習はやはり必要です」というお声もいただきました。

このような継承現場があるから、業界の技術は健全であり社会的信用に結びつきます。

今年春に叙勲の栄誉に輝かれた東京組合のT先生のお言葉が、(公社)全日本印章業協会機関誌『全印協』に掲載されていました。

その最後に「講習会がなければ今の自分は無かったと思います。」とありました。

大競技会や大印展の作品も、技能検定の受検者も、この継承現場である全国の技術講習会や研究会、勉強会から生まれてきて、引き継がれていくんだという事を肝に銘じなければなりません。

「職人の熟練仕事や丁寧な手仕事」というネットショップに見られるこの言葉も技能検定を初め、全国の職人の日々の研鑽に裏打ちされているという事をフランチャイズのはんこ屋さんや大手ネットショップのみなさんも含め、業界全体が忘れてはいけないことだと強く思います。

その上に乗っかって、技術を土台として、それを信用として商売をさせていただいているのです。

来週は、名古屋に参ります。

来週も頑張ります!

posted: 2021年 6月 21日