ハンコには物語がある

玉霰夜鷹は月に帰るめり

【作者】小林一茶

 

「実印が入用になり、印章ケースの蓋を開けてみると輪郭が破損していました。」という一本のお電話から相談を受けて、お客様がご来店されました。

奥様が結婚祝いに頂いた印章で、登録の時に一回押しただけ・・・何故輪郭が破損していたのでしょう?・・・どうも柘かアカネの木の素材にカラフルな色が塗られているその塗装?が木の素材が息をして膨張したのに耐えられなくなり、破損したようです。

お客様の近くには二軒の手彫りのはんこ屋さんがあって、自分の印章はそこで店主の蘊蓄を聞きながら、購入したとのこと・・・しかし、3年前には店主が亡くなられて、廃業されたとのこと・・・名前を聞くと、物凄く昔に組合で共に理事をされていた方のようでした。

とても寂しい限りです。

そういう技術にこだわりがあるハンコ屋さんがどんどん無くなり・・・ネットの大量生産型のお店が繁盛しているらしい・・・変な世の中だと、私は思います。

問屋さんが、悪気はないのだろうが・・・「はんこ屋さんは、一~二本のハンコが売れるだけで喜ぶ」と言われました。

分速でハンコが売れていく大手ネットショップから見ると、他愛もない一本だろうが、技術にこだわり、矜持をもっているハンコ屋さんが売る一本のハンコには物語がある・・・私は、そういうハンコを作製したい。

明日は、大印展の審査会です。

思う処あり、それを月に帰るきっしょにしたいと考えています。

※写真は、通勤途上にあるお地蔵さんの横にある掲示板に貼られていた言葉です。

posted: 2021年 9月 22日