分岐点のハンコ屋職人

先日お話しさせていただいた業界誌に掲載された「印章専門店はなくなる」という編集長Sさんの言葉がずっと頭に残っています。

それは編集長Sさんの発言を非難しているのではなく、全国のハンコ屋さんの現状を良く知っておられる編集長Sさんでありますので、それが印章業界の現状であり、分岐点は思いもかけずもっと早くやってくるのではないかと考えさせられたからです。

全国技能グランプリに参加していたころの仲間も、路面店を廃業し、下職に路線を変えた人、廃業、倒産の方もおられます。

私の周りでもこの早春に、一軒の印章専門店が廃業されました。

高齢というわけではなく、他業種への転業です。

周りの方には、仲間仕事(下請け仕事)も勧められたそうですが、別の道を選択されました。

仲間仕事をしても、今激安店はロボット彫刻機の彫りっぱなしですし、そのロボット型(パソコン型)彫刻機は、7400台も全国のハンコ屋さんに普及しています。

そのソフトで出来る一般的な仕事は、下請けには回ってこなくなり、特殊な物やハンコ屋さんが困った折に仕事が発生します。

それでは、食べていけないのが現状で、そういう意味では職業として成立しません。

例えば、町の時計屋さんというのが見られなくなり、時計の修理職人さんもマイスターと祭り上げられ、職を失いました。

外国産の時計も治せる腕の良いというより貴重な技術を有しておられる方のみが現役の時計修理職人として生き残っておられます。

先ほど、下請けには特殊な仕事しか来ないといいましたが、他にもこだわっておられるハンコ屋さんの難しい仕事を自分を滅して臨まねばなりませんし、その仕事の前では、展覧会や技術展の金賞看板は何の役にも立ちません。

そういう難しい仕事と出会えたことには感謝しております。

それ以外にも・・・

文字や輪郭の太さはバランスというものがありますが、文字をもっと太くとか輪郭も太くとか、兎に角見本帳のようにしてくれとか・・・いろいろです。

デパートの仕事もしましたが、これも厄介です。

納期の問題もあります。とにかく早くとか・・・土曜の夕方に注文されて月曜朝一にお願いします・・・お願いされた方は、必ず日曜日に仕事をこなさなければなりません。

名古屋まで新幹線でお届けしたこともあります。

思い出してもいろいろな苦労がありましたし、私という職人を鍛えてもくれました。

それが、その技術屋が需要減なのです。

そして印章専門店もなくなるとのこと・・・・

現在仲間仕事も若干させていただいておりますが、納期七日のこだわりのハンコ屋さんがほとんどです。

それ以外は、お断りいたしました。また最近も一軒ありましたが、廃業されたところも数えきれません。

今、確かに分岐点だと思います。

技術屋は、机に向かいボリボリが一番大切です。

ロボットに負けるような中途半端な技術は、何の役にも立ちません。

我流ではない基本に根差した精進努力とともにその専門性の研究を深めて情報発信し、さらにパホーマンスではない本物のオリジナルを開発せねば、技術屋としては、印章専門店としては生き残れないことでしょう。

技術屋の研鑽と本物の発信は、他の技術屋を助ける事に繋がります。

この業界、自分だけが良いということはありません。

お互い、頑張りましょう!

 

 

 

 

 

 

 

posted: 2014年 4月 5日