飲食店とハンコ屋さん

昨日、家内が問い合わせの電話を受けていました。

「はい、三田村印章店です。」・・・・

・・・「申し訳ございませんが、ご注文をお受けしたその日にお渡しは出来ません。」

電話が終わり聞いてみると、「今から行きますので、何分でハンコが出来ますか?」という問い合わせだったとのこと・・・このところこの問い合わせ・・・増えたように思います。

 

官庁街に移転してきて、一番思ったことは、飲食店が多いということです。

高級料亭から割烹・・・カレー屋さん、蕎麦屋さん、牛丼屋さん・・・・

いろいろな料理のお店と料金体系も様々です。

官公庁の偉さん(高級官僚?)や会社の社長さんが行くようなお店から、新入社員の方もコンパで参加できそうな居酒屋さんや立ち居のみ屋さんまで様々です。

高級官僚や社長さんが行かれる割烹や料亭では、おそらくラーメンやうどん、牛丼は出さないし、お客さんも注文をしません。

また、OL(言い方が古いか!)、オフィースにお勤めの若い女性は、素敵なフレンチレストランやイタリア料理店で女子会をされることでしょう。そこで、うどんや牛丼は食さないでしょう。

 

この船場地域で嘗てたくさんあった老舗のハンコ屋さんも随分となくなりました。

文具店の中で販売されていたり、靴修理や合鍵、バックの直しと共にスピード彫刻でハンコを販売しているお店もあります・・・それは、ハンコ屋さんではなく、ハンコも売れればよいとするお店です。

 

いろいろなやり方、いろいろなお店が、飲食店のようにあって然りですし、それが自然なのですが、日本料理屋さんで、イタリアンやフレンチ、ラーメンは販売していません。

思うのですが、ハンコ屋さんは全部売りたがります・・・・嘗てのデパートのなんでもおいてある食堂です・・・悪いとは言いませんが・・・今のハンコ屋さんは、何を目指しているのでしょうか。

 

「匠の手打ち蕎麦」という蕎麦専門店に入り、メニューに「麺の事なら何でもお任せください・・・うどんは勿論パスタ、ナポリタン、マカロニたっぷりのグラタン・・・」とあれば、そのメニューから「十割そば、ください!」と注文できるでしょうか。蕎麦好きの私なら、速攻で店を後にします。

 

「何分でハンコが出来ますか?」というお客さんにもこたえるのが商売と言われる方もおられますが、印章のお話しを熱心に聞いてくださり、印章デザイン(印稿)を確認頂き、象牙材を選択され、お渡しまでに10日以上のお客様のステータスと満足感が、それを受けた一瞬で吹っ飛び、「間に合った」と喜んだ?お客さんは、またどこかで同じような買い物をし、実印はネットの激安店で購入されるか、開運?高級印を購入されるかもわかりませんが、何分かで彫刻したお店の事はもう忘れていることでしょう。

「ああ美しい!」「綺麗ですね」「ここで作成してよかった。」という今の信用を積み重ねることが、老舗ではない当店の目指すところです。

 

 

 

 

posted: 2014年 5月 9日