蝌蚪の頭

考へてをらない蝌蚪の頭かな
【作者】後藤比奈夫

蛙の子である蝌蚪は、頭が大きいだけで何も考えていないらしい。
頭の中には、大量の情報やそれを駆使できる多様な言語が詰まっていて巨大化しているのかな。
それを上手く組み立てて、生きていく能力に欠けているのかもしれません。
印章は、輪郭の中に文字が入っています。
いくら文字をたくさん知っていても、それを彫刻する能力がなければ、印章は出来ません。
また、文字を上手に書けて彫刻も出来たとしても、その文字の構成力やデザイン能力がないと、きちんとした印章は出来ません。
さらに、いくらそれが上手くできたとしても、名人上手と言われても、お客様の為に作製しているという哲学を持たなければ、それは文字が彫ってある単なる棒か製作者の趣味嗜好品であります。

新型コロナウイルスの感染拡大が人類を恐怖に陥れています。
医学の進化は「人生100年時代」に人を導きました。
その医学の膨大な情報量をもってしても、簡単には感染拡大を止めることは出来ていません。
政治や経済の力とその情報量を駆使してもです。
今ある命を救えないのです。
世界はグローバリゼーションへのチェック機能をかなぐり捨て、価値観の優先が合理化と効率化であり、その行く先が自国ファーストであり、独り勝ちの世の中であります。
大きくなった頭を振り回さないで、今ある命を救うために、どこに価値を戻さなければならないかを問い直し、立ち止まり情報の取捨選択を行う必要性にせまられているのかもしれませんね。

この文章を書いている最中に、志村けんさんの訃報が飛び込んできました。
お悔やみ申し上げます。

posted: 2020年 3月 30日

印章の正義を盛り返す

「各地の商店街はシャッター街となり個人の印章店は見かけなくなって久しく●●●等のFC店でのPC機械彫りが主流となってる今、印章の地位は低くなる一方です。ネットでは嘘がまかり通り開運、キャラクターデザインでも印章となると既に印章はこの世に不用品と言われるのも当然です、私は日本人として書類に心を静め正眼の姿勢で押印する所作が好きなのですが何とか心ある職人の方に頑張ってもらえたらと思います。印章の価値を貶める原因ははっきりしていますので正義を盛り返して頂きたいです、応援しています。」

上記の文章は、私の言葉ではありません。
昨日の「信証の具を作らせて頂くとは」というブログへのコメントでいただいたものです。
この場もお借りして、コメントへのお礼を申し上げます。
業界団体は言います。
「消費者への啓発活動」と・・・
消費者はよく見ておられます。
分かっていないと思い込んでいるのは業界人です。
このコメントを頂いて、敢えて業界人に問いたい
消費者を啓発する前に、
自らを啓発しておられますか?
自らの仕事に正義を貫いていますか?

本日は、島根県より予約のお客様がありました。
遠方よりのお客様、有難うございます。
バタバタさせてご迷惑をおかけしました。
この場をお借りして、お詫び申し上げます。
お気をつけてお帰りくださいませ。
ご注文の品、精魂込めてあたらせて頂きます。

posted: 2020年 3月 22日

信証の具を作らせて頂くとは

木瓜咲くや漱石拙を守るべく
【作者】夏目漱石

世渡りの上手い人がいます。
強いモノには靡き、甘い顔をしてすり寄り、その恩恵を乞おうとします。
案外、それが上手く行く時もあるようです。
強きモノが変われば、顔色を変えて、姿を変えて・・・カメレオンの様な人がいます。
「拙を守る」とは、目先の利に走らず不器用でも愚直に生きることをいいますが、ともすると甘言ににじり寄ってしまう自分に気が付き、『草枕』の一節を思い浮かべるのかもしれません。
「世間には拙を守るという人がある。この人が来世生れ変るときっと木瓜(ぼけ)になる。余も木瓜になりたい」
私も木瓜になりたいので、拙を守ろうとするのかもしれません。
デジタル化の時流のなかで、印章を商っていると、そういう事を考えてしまいます。
印章は、それを商う商売人のためにあるのではなく、またそれを彫刻する技術者のためにあるのではなく、それを使用する人の為にあります。
ですので、「唯一無二」を守るとは、拙を守ることに繋がることだと私は自負したい。
印章は金儲けのための商材でもなく、芸術品でもなく、握っていたら幸せになるという護符でもなく、それを使用する人の「信証の具」であります。

明日は、休日ですが島根県からの予約のお客様が来られます。
今日は三連休の中日、少し早く店を閉めて、家内と久しぶりの食事に出かけたいと考えています。

posted: 2020年 3月 21日

「手仕上げ」印章の職人とは?

 

春風や闘志いだきて丘に立つ
【作者】高浜虚子

今日は、20度近くまで気温が上がるとか、春分の日を前にして、暖かい日差しに感謝です。
春が早く稼働しているようですね。

明治以降の日本の印章業史を振り返ってみると、制度による確立から、様々なところから触手が伸びてきて、印章という商品の在り方を左右してきました。
易者さんが見料の上乗せとして印章を下職に彫らせて始まった印相印、開運印がブームになった時がありました。
また、霊感商法の商材としても使われてきました。
それぞれ問題は大いにあったのでしょうが、印章を重要視していたというプラスな一面もありました。
ところが、印章の彫刻方法の区分として、その作業工程を手彫り・手仕上げ・機械彫刻と業界規定が行われてから、その言葉が一人歩きしだしました。
そして、パソコンフォントを使用しても「手仕上げ」印章と言う名の曖昧な印章が、市場を闊歩しだし、パソコン印章やフォント印章が大量に生産されています。
その影響力が印章の価値を貶めています。
印相印や霊感商法の時代には、まだその仕事が職人の所に回ってきていました。
今は、手仕上げと言う名の機械彫刻が職人仕事を罵倒し職を奪っています。

大手ネット通販のサイトが、初めの意志は「地方の疲弊した小さな商店の良品に光をあて、全国展開を」的なコンセプトから売れればよい式に、あるいは負けたらあかん主義が芽生え始め、その意志を変容させてきました。
それと、「手仕上げ」印章というのはよく似たところがるように思います。
技能検定2級に合格し、2級技能士の資格を名乗れば、手仕上げができると国家検定で保証されています。
それがなくても商売は勿論できますが、「手仕上げ」をネット上の看板にしている所には、技能士がいないという不思議さがあります。
今年に入り、その技能士を誕生させる技能検定が印章職種において廃止されるという検討が厚労省により行われました。
令和3年度後期技能検定において全国で120名の受検者が集まらなくては、廃止にしますよと言われています。
これだけ、「手仕上げ」印章の看板が多く上がり、その看板の下にパソコン印章やフォント印章が大量に販売されているのですから、多くの2級技能士が誕生してもおかしくはありません。
それに反して、技能検定受検者は減少の一途をたどっています。

世に偽物は沢山あります。
偽物でも良いという意見もあるでしょう。
世にはいろんな意見があります。
しかし、時としてその偽物やまがい物が、本物の価値を低落させ、職人仕事を奪う場合がります。
それに関しては、きちんとした職人に仕事を取り戻そうと闘志がみなぎります。
そういう人もいるのです。
いろんな意見はいろんな人からうまれるのですね。

明日は、春分の日。
大印展の課題決定の審査日です。
新型コロナウイルス伝染拡大の影響で、審査員が一所に集まり協議して課題を決定することは難しく、遠隔によりファックス通信で決定されます。
明日は、お店待機でじっくりと課題を検討させて頂きます。
このような時に、組合事務所での裏方作業をして頂く技術委員のみなさま、ご苦労様です。
明日は、手洗い消毒を忘れずに頑張ってください。

写真は春のお花を家内がかってきてくれたものです。

posted: 2020年 3月 19日

技術継承は恩送り

受験子に幼き日あり合格す
【作者】伊藤敬子

本日、令和元年度後期技能検定の大阪での合格発表がありました。
印章職種においても、最後のゴム印彫刻作業の技能検定の最後の合格発表がありました。
合格された方へ
おめでとうございます。
喜びはひとしおのことと思います。
その喜びを忘れないで、次に伝えるという具体的な行為に結び付けてください。
ゴム印彫刻作業は、あわよくば再開されるなどという夢を語る方もおられますが、『第25回技能検定職種の統廃合等に関する検討会』の議事録を読んでいても、もはや木口彫刻作業(実印や法人印を彫刻する作業)の廃止を様々な要素を検討して有識者は提起しておられます。
そういう状況です。
夢は夢かもしれませんが、ゴム印彫刻も技能検定再開に持ち込むには、ゴム印彫刻に情熱を傾ける、その具体的行動を示さないとダメです。
あったらいいなぁ~、誰かしてくれないかなぁ~とか・・・
他力本願では、まあ99%無理でしょう。
ゴム印彫刻作業の技能グランプリ復活においてもそうです。
それはここでは置いておきますが、合格の自らの喜びをその場で終わらせないためにも、令和3年度後期技能検定で実施予定の木口彫刻作業に全国で120名を集める活動に具体的にかかわって欲しいし、何も出来ないのではなく、技能士なんだからできるはずなんです。
ご自分が合格した道を考えてください。
誰かに教えてもらいながら、又誰かのお世話になって技能検定を受検されたと思います。
恩は返すのではなく、次に送らねばなりません。
恩送りです。

もし、令和3年度後期の技能検定に120名の受検者を集めなければ、確実に印章業界から技能検定は無くなります。
技能検定も維持できない業界が、印章制度や印章文化を守ることなどできません。
それは、国(厚労省)がよく理解されていることだと思います。
組合員や非組合員、安売り屋さんやネットショップ、フランチャイズといっている場合ではありません。
是非、合格された喜びを次に伝える行動を考えてください。

おめでたい合格発表の日ですのに、長々とすみません。
写真は、新型コロナウイルス感染拡大の為に、お花屋さんの販売が大変だというニュースを聞いて、家内が買ってきてくれた花です。
お花は、心を和ませてくれますね。

posted: 2020年 3月 13日

大好きな卒業歌

口に出てわれから遠し卒業歌
【作者】石川桂郎

3月、卒業式の季節ですが、新型コロナウイルスの為に式自体が中止となっているところも多いと思います。
この季節を迎えると、思い出す卒業歌があります。
二十四の瞳の『仰げば尊し』です。
この歌は、2番に「身を立て 名を上げ やよ励めよ」というところがあります。
これのみをさして、批判される方がおられますが、「二十四の瞳」のなかでは、大石先生(壺井栄)は、お国の為に死んできますと出征の報告に来た教え子に対して、「死んでもらうために、あなたがたを教えたのではありません。」と強く叱ります。
また、反戦思想といわれていた『草の実』を今の作文の授業である綴り方の教材として用い、人の暮らしをありのままに表現することの大切さを子ども達に説いていました。

私が、大阪府印章業協同組合の技術講習会にお世話になり30年ほどになります。
その内の半分以上は講師としての役割も果たしてきました。
多くの技能検定合格者を輩出してきたという自負もあります。
技能検定1級が合格すれば、ある意味卒業です。
そういう意味では、多くの卒業生を見送り、気持ちとしては「身を立て 名を上げ やよ励めよ」という想いを抱いてきました。
もう少しのくだくと・・・
技術により、稼げることができるように、身を立て
さらに研鑽に努めて、今ある技術に満足せずに上を向き、大印展や大競技会に出品して、名を上げ
お客様に技術を還元し、丁寧な仕事を続け、後進の指導にあたり、やよ励めよ・・・

現下、技術に身を置き、やよ励めよとは言いづらい業界環境です。
パソコン印章やフォント印章の乱売、技術をすることに価値を見出しにくい現状があります。
ず~っと、二十四の瞳の『仰げば尊し』の気持ちでありたい。
そういう意味からも、パソコン印章やフォント印章は印章ではありません。
本当の印章は、講習会で勉強をして技能士になられた人やさらに上を目指して励んでいる人が思いを込めて、モラルある印章製作の中にこそあると叫び続けたい・・・そういう気持ちをさらに深めます。
そういう季節になりましたね。
今は、この卒業歌も聞けなくなってきました。
今年は、さらに・・・
ぼ~っと生きてんじゃねえよ!という人が多い昨今です。
そういう方にもおくります。
画面の映像をよく見てお聞きください。
https://www.dailymotion.com/video/x6y7huw

posted: 2020年 3月 6日

パソコン印章と印章の本質

三月は人の高さに歩み来る

【作者】榎本好宏


印章の起源となる円筒印章について・・・
このポスターは、呪術的側面を説明していますが、もう少し勉強を進めていきましょう。
印章の必要性の思想により誕生した円筒印章は、交易活動により普及していきました。
古代バビロニアにおいては、ハムラビ法典により印章はその法的価値を深め、商業契約文書への捺印の優位性を確立していきました。
その後アレキサンダー大王のヘレニズム時代からローマ帝国までの約3000年の間、円筒印章はオリエントの交易に重要な役割を発揮したに留まらず、国の興亡に大きく関与していったと言って過言ではありません。
それが示すことは、人と人との契約から国の統治、国と国との交易・・・そういう役割の考え方としての「印章」・・・印章の本質とも言えます。

その本質から遊離しているのが、いまの日本の印章市場です。
パソコン印章やフォント印章では、その本質は示せません。
それどころか、その影響を受けて、印章の価値はドンドンと低下しています。
「印章」という考え方は必要なのですが、実際の印章がその役割を担う価値を放棄しているというのが現状です。
それは、唯一無二を守る技術とモラルがパソコン印章やフォント印章にはないということです。
あるならば、令和4年1月実施の技能検定を受検し、唯一無二の技術とモラルを示して頂きたいと強く要望致します。

世間は新型コロナウイルスの感染拡大で大変です。
ニュースなどでは、スペイン風邪などを例にとり、早いうちからの対応が大切と言われています。
今!技術とモラル無きパソコン印章やフォント印章が乱売される中、その一方でそれを証明するように、技能検定が業界から無くなろうとしています。
いち早く対応されたのは、東京印章協同組合です。
技能検定受検対策講座運営委員会を立ち上げ、この4月から組合員以外にもお声をかけて、講座受講生募集を呼び掛けています。
近畿は、今年は何もしないらしい・・・大阪はそれに追随するとか・・・。
パソコン印章やフォント印章の感染拡大の影響は、もうここにも表れています。
後手の対応は、誰にでもできます。
しかし、来年になって誰が対応するのでしょうか?
ウイルスは蔓延しているに違いありません。
いや、もう・・・。

posted: 2020年 3月 1日

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